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「その薄っぺらい顔やめたらどうですかィ?」
沖田に案内され、ようやく部屋に足を踏み入れた瞬間だった。部屋は灯りを灯されていず、月明かりが沖田のシルエットを写し出した。
「ああ、この笑顔とかのことです?」
常に無邪気な笑みを浮かべている自身の顔を、ペタペタと触りながら言った。
「意識すれば戻せるんですが」
口角を下げ、糸のように細めていた眼を開くと、一瞬で空気が張り詰める。部屋の温度が急に下がったように感じた。
「意識しないと、またこの表情筋は24時間労働しちゃうんですよねー」
颯天はまたニコリと笑った。恐ろしい雰囲気も消え、生暖かい梅雨の風が髪を揺らす。
しかし、沖田の周囲にはまだ緊張の糸が張り巡らされていた。
一歩でも動こうものなら、この糸を切ってしまう。
この糸が切れれば獣が、鬼が、襲ってくる。
そんなことあるわけがない。だが百戦錬磨の一番隊隊長の身体は固まったまま動かなかった。
「大丈夫ですか?隊長さん?」
颯天が柔らかい声で沖田に声をかけた。が、その声に沖田は身体で反応し、敏速な動作で刀に手をかけた。
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沖田ファン - プロフィールの高杉晋助の漢字が違いますので、訂正お願いします。 (2019年3月2日 15時) (レス) id: a06ab380f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年4月8日 9時