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「本当に、本当に本当に本当にほ!ん!とーに!このガキがやったのか?これを!」
真選組屯所の局長室。素っ頓狂な叫びを上げて、事件現場の写真を掲げているのが局長である近藤。顔を顰めて両耳に小指を突っ込んでいるのが一番隊隊長、沖田だ。
「一番隊の全員がみてましたぜィ?
何なら一人一人呼び出して問いただしてもいいんじゃないですかィ?」
信頼のおける部下の疑心を抱かずにいられない発言。困惑の色が見える近藤の視線の先に、縁側でお茶を啜る少年がいる。見たところ10,11歳ぐらいだろうか。
少し華奢で、カッコイイより美しいという形容詞の方が相応しい美少年だった。
そしてこの少年が、今、真選組をおおいに悩ませているのである。
事の発端は昨夜。
過激派攘夷党の潜伏場所を発見した真選組は沖田率いる一番隊を向かわせ、襲撃。ところが直前にその策が何処からか露呈していたのだった。
一番隊が到着したのは浪士たちがちょうど建物から脱出を成功させた瞬間。もちろん真選組の一番隊ともなれば真選組の中でも精鋭揃いである。路地裏に逃げ込んだ雑魚浪士など容易く追い込める。
そうした、経験ゆえの自己評価と自信が油断を招いた。
情けないことに、追跡中の隊士たちはそれほど気を張っていなかった。
そうした心のゆとりはすぐに打ち砕かれることになる。逃亡中の攘夷志士の先に小さな子供がいるではないか。
隊士は皆、子供を殺させまいとそれはもう必死に走った。が、少し距離が離れすぎていた。浪士の逃げ道を塞ぐように佇む子供。当然、躊躇なく刀が振り下ろされる。
飛び散る鮮血に真選組隊士たちは思わず足を止める。
数秒の沈黙。
刀を振り下ろした浪士はその間一歩も動かない。なぜすぐに走り逃げないのか。ようやくその答えに辿り着いたとき、浪士は崩れるように膝を着いた。
錯乱し、無茶苦茶に刀をを振るった他の浪士たちもまた、バタバタと倒れていく。
その後困惑に立ち尽くす隊士の元に副長 土方が到着し、屯所へ戻るよう指示を出し、沖田はその子供を重要参考人として屯所に連れてきた、というわけである。
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沖田ファン - プロフィールの高杉晋助の漢字が違いますので、訂正お願いします。 (2019年3月2日 15時) (レス) id: a06ab380f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜 椿 | 作成日時:2018年4月8日 9時