魅せる力 ページ20
あぁ……ついにこの時が来てしまった。
キバナさんとダンデさんのバトル終了後、私は選手控室で着替えていた。メガリザードンXイメージの黒地に蒼い焔のトライバル模様のロングコートを羽織る。
2人のバトルの後に、休憩ともう一試合あり、その間に準備をしていた。
エキシビションマッチの対戦相手は、前日まで伏せられている。
ローズさんからは【魅せる演出で出て来て欲しい】と事前に言われているが……
「グランプリ取ったからって……」
打ち合わせはしているものの、コンテスト会場とは違う為、照明の具合等細かいところは分からない。もっと言うと、ぶっつけ本番だ。
「コンテストだと思うと、スタジアムに立つのも怖くないね」
スタジアム上空に、リザードンの背に乗り向かう。
インカムから聞こえるローズさんの声、照明の落とされる合図と音楽が入る。
「3…2…1…キュウコン！」
スタジアムの屋根ギリギリの所で、キュウコンを呼ぶ。
「こなゆき」
スポットライトで照らされたスタジアム中央に、壁や観客席を蹴って向かうキュウコン。粉雪の中、凛と佇む姿は、美しく気品に満ちている。
「リザードン、行くよ」
音楽のタイミングに合わせ、キュウコンのれいとうビームとリザードンのほのおのうずで、氷を形作っていく。
ポケモンの相性としては最悪の組み合わせだろう。だが、お互い技をギリギリの所で威力を調整している。
「ラスト」
リザードンから飛び降りる。キュウコンの背に空中で掴まり、氷像の頂点へと着地する。
音楽が止まると同時に、リザードンは私の背後に降り立ち、力強く咆哮をあげる。
「よくやった」
表情は崩さず、2匹に声をかける。
静寂……からの熱狂的な歓声。スタジアムが揺れている。氷像から降り、キュウコン、リザードンと共に、ダンデさんの前に立つ。
「チャンピオン・ダンデ選手の対戦相手は！！カロス地方新チャンピオン！！A選手だーーーーーっっ！！！！」
アナウンサーさん。代理だよ、代理。
「明日はよろしくな」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「明日のエキシビションマッチは、タッグバトル！双方のパートナーは当日発表になります！」
＿スタジアム貴賓室
「氷の薔薇ですか……魅せてくれましたね」
「そうっスね………」
あぁ……
イラつく…………
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作者名：1204Sixh | 作成日時：2020年6月23日 15時
