マスタークラス ページ19
エキシビションマッチ前日。今日は、キバナさんとダンデさんのバトルの日だ。
「ここで応援しててくれ」
そう言われて渡されたチケットは、キバナさんの横顔がよく見える、最前列のチケットだった。
ヒノアラシを抱きしめ、観客席へと足を進める。
「なぁ…あの人って……」
「んなわけ無いだろ？」
「Aじゃない？！」
「あぁ……カロスの」
ざわめきと嘲るようなクスクス笑いに、心臓がキューっと締め付けられる。
「ヒノォ……」
無意識にヒノアラシを強く抱きしめていたみたいで、ヒノアラシから心配そうな声があがる。
「大丈夫……大丈夫だから……」
「キバナ選手の入場です！」
「ヒノッヒノォ！」
アナウンスとヒノアラシの声に顔をあげる。
歓声をあげるファンに手を振るキバナさん。
「キバナさん……」
ファン同様、手を振ると、こちらに気付いてくれたのか、例のワンパチスマイルを向けてくれた。
「キャーッ！！」
「見た？今の見た？！」
「キバナが笑いかけてくれたー！」
「本当嬉しい！！」
うん。いちファンとして、私も嬉しい。
「バトルスタートッ！！」
バトルは、技の応酬。手に汗握るものだ。一瞬たりとも目が離せない。
「ジュラルドン、戦闘不能！よってこのバトル、ダンデ選手の勝利！！」
スタジアムが歓声に包まれる。皆がチャンピオンの無敗記録更新に湧いている。
「キバナさん……」
ジュラルドンへ労いの言葉をかけ、チャンピオンとバトル後の握手をかわす。何かを話しているようだが、とても小さな声だからか、こちらには聞こえない。
「明日はこうはいかせねぇ」
「明日もキバナとバトルできるのか！」
「オレじゃない。Aがだよ」
「っ…！心得た……」
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作者名：1204Sixh | 作成日時：2020年6月23日 15時
