38 ページ39
·
「えぇ。恐らく貸し切りになりそうな具合です。」
「マスターもご一緒しません??
いつものお礼にご馳走させてほしいなー。」
「有り難いお誘いですね。
ではせっかくなので、遠慮なく頂きます。」
マスターは穏やかに笑うとウィスキーをグラスに注いだ。
3人で乾杯して、色んな話をした。
そうして穏やかに時間を過ごしていると、ドアのベルが鳴った。
Aも波音も話に夢中で来た客には目もくれなかったがマスターは声を掛けた。
客は特にそれに反応することもなく、Aに真っ直ぐ近寄った。
その様子にハッとしたマスターが声を上げる。
「…っAさん…」
「…よぉ、A。久しぶりだなぁ??」
男は振り返ったAの顎にそっと手を添えた。
相手を認識したその顔からは表情が削ぎ落ちた。
「久しぶり、オジさん。12年振りかなー??」
「…惜しいなぁ。13年振りだろ??
しかしお前、綺麗になったなぁ。」
「噂によると捕まってたって聞いたんだけど??
シャバに出てこれたんだねー。」
平然とそう話すAと男を見ていた波音は、この男の正体が分かると顔を真っ青にした。
「…Aっ…」
「大丈夫だよ、波音ちゃん。ごめんね。」
男と話すよりも優しくそう言ったAはその手をそっと握った。
「出て来たばっかりでお前に会いに来たんだぜ??」
「それはあんまり嬉しくなかったなー。
それで、用件は何??」
「アイツ死んだんだってなぁ??お前のこと
大好きで極道にケンカ売って。ざまぁねぇな。」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべてそう言った男の言葉に、Aは変わらずに笑みを返した。
「それがどうしたの??わたしはもう成人してる
から、オジさんには関係ない話だよね。」
「そりゃそうだ。俺とお前は親子じゃねぇからな。
でも俺も昔のままの俺じゃねぇんだよ。」
男は自信あり気に笑った。
「あの時はただのチンピラだったし、アイツに
腕っぷしじゃ勝てねぇから黙って手を引いたが…
今はそうじゃねぇ。
何で俺が務所にいたか知ってるか??」
「興味ないなー。」
「身代わり出頭したんだよ。
出てきたら幹部にしてやるって条件付きでな。」
「へぇ。ただのチンピラが出世したもんだね。」
「その条件にお前も入ってんだよ、A。」
頬をするりと撫でるその手にAは男を冷たく一瞥した。
·
110人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
YUMi(プロフ) - ゆんこさん» ゆんこさん、新作見てもらえて嬉しいです!!期待に添えるように頑張ります(◔‿◔)性格悪めは書いてて楽しいです笑 (2022年11月13日 16時) (レス) @page4 id: 85b1561d95 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんこ - 新作待ってました!性格悪い夢主ちゃんいいですね!!これから楽しみにしてます!無理をなさらず頑張ってください!! (2022年11月12日 22時) (レス) @page2 id: 8a5959758c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:YUMi | 作成日時:2022年11月12日 18時