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2005年7月。
Aはヘルプで３日間六本木の美容室に
行っている兄、聡の職場に顔を出し
泊まりの着替えを渡すとお店を後にした。
六本木はなかなか来れないため
Aはふらりと辺りを散策することにした。
いつも側にいる万次郎も場地も堅も
今日はいないため、気ままである。
ケータイは先程から着信とメールを
知らせているが一切の無視である。
もちろん整った容姿のAが1人で
歩いていれば六本木を歩くような不良たちは
放っておいてくれるはずもなく…
ナンパに遭っていた。
東京卍會特攻隊長·蔵谷Aの名は
それは無敵のマイキーに並ぶほど有名だが
この見た目である。
誰もこの少女がそのAだとは思わず
１人で歩けばナンパはよくあるものである。
万次郎たちがAを１人で歩かせたくない
理由がそれであるのを本人は気づいていない。
「オネエさん可愛いね。
今から俺たちとイイコトしない??」
「のんびりふらつきたいだけだから
そういうのはちょっといいかな。」
「なら付き合うってー。
そのあと俺らにも付き合ってくれよな。」
Aは小さくため息をついて
視線を辺りに向けた。
するとこちらを見ているスラッとした
黒と金の三編みの男と目が合った。
Aは本人でも知らないうちに
ゆるりと口端を上げていた。
絡まる男たちの腕を難なく外すと
その三編みの男に駆け寄り、そっと腕に触れた。
「蘭ちゃん、どこ行ってたの??
待ちくたびれちゃったよー。」
「…お、おいアレって…
間違いねぇ、灰谷兄弟…」
Aが左腕に触れた男は
その気怠げな顔に楽しげな笑みを浮かべて
その体を自然な動きで抱き寄せた。
「俺のこと放っといてお前こそ何してんだよ。
こんなヤツらに絡まれやがってよー。
…んで、お前らは
誰のにちょっかい出してんの??」
「すっ、すいませんっ!!」
Aに絡んでいた不良たちは
あっさり背中を向けて走り出した。
Aはそれを見送ったが隣に立つ男は
肩からそっと手を放してポンと頭を撫でると
気怠そうな様子からは想像がつかないくらい
素早い動きでガラ空きの背中に蹴りを入れた。
苦笑いして、心の中で男たちに手を合わせた。
「ここいらでこんな事するなんて
さてはお上りさんだなー??
俺は竜胆みてぇに優しくないから
次からは気を付けろよー。」
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作者名：YUMi | 作成日時：2022年7月23日 12時
