最後の挨拶は。 ページ5
no-side
青い空は分厚い灰色の雲に覆われ、雨が降っていた。
織田は傘もささず、髪に滴る雨にも気にせず歩く。
雨の音、車の音、人の声___
織田の耳は色々な音が聞こえた。
そのなか、より大きい音が聞こえる。
織田は足を休めず携帯を耳に近ずける。
『織田さん!もうこれ以上行かないで!』
「…Aか」
それほど驚かなかったのは、Aから電話が来ると、悟っていたのだろう。
「俺には義務がある」
『でも!今いるところを教えて!』
携帯から聞こえたAは走っている音がした。
声には焦りと驚愕が混じっていた。
雨がどんどんと小雨へと変わる。
織田は歩くのをやめ、立ち止まった。
『全部、森先生の計画だった!織田さんのせいじゃ__』
それと同時にAが織田のいた橋の先着いた。
電話とAの声が重なり合う。
かなり息づかいも荒く、焦っている。
「俺は、小説家になりたかった」
Aの言葉を遮り、かつての夢を話す。
「だが、もうその資格はない」
これからの覚悟を言う。
その声はもう決意をした声だった。
「A、お前は教官だ。
しかし、お前は本当に才能のある者だけを育てたいのか?」
『……』
Aに助言をする。
これがAを救ってくれると良いな、と思いながら。
「じゃあな」
最期の別れを言って手をあげる。
あとちょっと走れば大切な人を守れる。
しかし、「来るな」と言われた。
Aは絶望感の多さに携帯を落とす。
『織田さん、さようなら』
空を見上げてAは呟く。
落ちた携帯を拾ってポートマフィアに戻る。
雨は止み、光がAと織田を照らす。
『……私は"また"大事な人を死なせてしまった』
Aの声は震え、目には涙が溜まっていた。
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作者名:MANA☆ | 作成日時:2024年2月12日 11時