お父さんは。 ページ23
中島side
『あら残念。持ってたらすぐに帰れたのになぁ』
この人怖い…
本当に残念がってるAちゃんって頭に変なネジついてる……ってあれ？
綺麗な椅子に座っていて気づかなかったが、足に傷があった。そして、椅子の後ろではいつの間にか手が縛られている。
逃がさないという意思が丸見えだ。
「Aちゃん、なんで此処に？」
『知らね。興味もない』
不機嫌そうにフィッツジェラルドを見た。
僕もならって見ると、ようやく始められる、と言わんばかりの顔をしたフィッツジェラルドが指を鳴らす。
「さて、こうして呼んだのは君たちがどんな立場なのか、というのを見せつける為だ。まぁ、理由も教えてやるが」
「どういう事だ？」
最初に僕の説明なのか、フィッツジェラルドは僕に顔を向ける。
「組合はある"本"探している」
「"本"……？」
【本】＿＿世界にただ一冊のみ存在し、どんな炎や異能でも傷つかないとされているらしい。
その本が、此処横浜に封印されていると、ある預言系の異能者が予知したという。
「その"本"とやらに僕に何の関係があるんだ？」
そもそも、そんな本なんて知らない。
「君が文字通り、"道標"だからだよ。
君を空の上ここにお招きしたのは、眼下の街と一緒に灰になられては困るからだ」
「"道標"？」
何故僕が…？
フィッツジェラルドを見るが、真意が見えない。
「異能特務課は無力化した。残るは探偵社とポートマフィアだ。ポートマフィアは夢野久作を捕らえている」
｢待て！じゃあなんでAちゃんが……？｣
Aちゃんは何も関係ない筈なのに？
Aちゃんを横目で見るが、光のない目でフィッツジェラルドを眺めていた。
その目に僕は恐怖を覚える。
「俺たちは、【本】の他に"ある物"を探している。
その"ある物"は【本】以上に探すのが面倒らしい。そして"道標"には知らないだろうが、"ある物"を作った存在＿＿横光利一には娘がいる」
｢娘？それがAちゃん？……でもAちゃんの苗字は高見だった筈…｣
｢何を言っているんだ"道標"。
そこが決定打だった。
Aちゃんはフッと笑って僕に言った。
『もういいよ、敦くん。真実を話そう。
そうだよ。私は元、高見A。お父さんが出来て横光Aとなったんだ』
｢まぁ、そのお父さんも死んじゃったけど｣と悲しそうに笑った。
まるでAちゃんはその時、ある男性を見ているようだった。
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作者名：MANA☆ | 作成日時：2024年2月12日 11時
