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白鯨は。 ページ22

no-side



ある広大な森の中に、小さな小屋があった。


そんな小屋では、ある少年が階段を降りていた。



ジョン・スタインベック
能力名___『怒りの葡萄』


奥にはジョンの異能で拘束された夢野久作がいた。


「やぁ、調子はどう?」

「痛い……痛い痛い痛い痛い……

ねぇ、Aさんは?なんで僕のことを助けに来ないの?なんで?なんで?なんで?なんで?__」


なんでと痛いを繰り返し言う久作に、ジョンは自身の腹を手で抑えながら近くにある椅子へと腰掛けた。


「さぁ?どうだろうね。
ま、恨むなら"緊急プラン"を考え出した作戦参謀か、あのラヴクラフトの精神を破壊なんていう馬鹿げたことを仕掛けた君自身を恨みなよ」

「…殺す…殺してやる……!」


憎しみに満ちた星の瞳が向けられる。

それを冷めた目で見つめ、ジョンは足元にある木の根を踏んだ。


「いぎゃああぁぁっあ!!!!!___」







─横浜の上空─

白鯨モビー・ディックが優雅に空を泳いでいた。


その中で、敦とフィッツジェラルドが対面している。

フィッツジェラルドはふかふかの高級ソファに座り、片手にシャンパンが入ったグラスを持つ。


「やぁ、おはよう。虎人の少年。飛行異能要塞『白鯨』での船旅クルーズは気に入ったか?」


敦は問いかけに答えず、だんまりを決め込む。

代わりに、ただフィッツジェラルドを睨んでいる。


いきなり後ろの扉が開いた。
振り向くと、そこには以前一戦交えたモンゴメリがメイド服でいた。

驚いたように目を開く敦と目が合うが、すぐに顔を逸らし自分の作業に取り掛かる。


「彼女は…」

「あぁ、モンゴメリ君か。手の内を知られた異能者に戦術価値は無いのだが…本人がどうしても残りたいと言うのでな」





_____そしたらまた独りよ。そんなのって信じられる?





モンゴメリの言葉を思い出し、敦は思わず俯く。


他の扉が開いた。

見てみると、武装した二人の男が暗赤色の女を丁寧に抱えてきた。


敦とは反対に、綺麗な椅子に座られる。
長い髪で分からないが、殺意のある視線があった。


敦は顔を見ようと覗き込む。

すると髪の間から顔が見えた。


「まだ情報を吐かないか」

『はは。生憎、自分の秘密を喋る趣味はないしね』


ペロリ、と舌を出したのが見える。


「え、Aちゃん!?」


予想外の人物に驚きの声を上げた。
Aがゆっくりと敦の方を向き、淡い赤色の瞳と目が合う。


『…あぁ敦くんだ。あのさ、ギロチン持ってる?』

「持ってないし普通そんな呑気にいられる?」


あまりの呑気さに突っ込みせざるを得ない敦であった。

お父さんは。→←倒れたは。



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作者名:MANA☆ | 作成日時:2024年2月12日 11時

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