小雨は。 ページ2
no-side
「A…？」
『あぁ、ごめんね。見苦しいところ見せちゃって』
Aは煉瓦の壁に寄り掛かり目に手を当てていた。
しかし、安吾が来た瞬間、いつも通りの笑みを浮かべる。
『坂口さんが生きて出てくれて良かったよ、お陰で死体処理をしなくて良くなった』
冗談を入れて話すAに安吾は「ええ」と言う。
「けれど、貴方がたと呑むことはもう二度とありません…完全に自業自得ですが」
苦笑する安吾に、Aは悲しそうに微笑む。
『この世に居ないのと居るのでは全く違うから』
その言葉は、安吾に向けたものでもあったのだが、何故か空を見ていた。
不思議に思いつつも「そうですね」と言い、それ以上言うことはなかった。
Aは「あ、雨だ」と呟く。
小雨だが、ぽつぽつと次第に音は大きくなる。
Aの顔には、恐怖があった。少し動揺もしている。
＿＿＿あの子の悲しみをもう増やさないでくれ給え。
太宰の言葉が頭にこびりつく。
「...すみませんでした」
今の安吾には頭を下げ、謝ることしかできなかった。
三重間諜スパイを務めなかったら。
特務課ではなくマフィアだったら。
これを後悔と言うのか、それとも願望というのか。
＿＿危ない状況での口実か。
『死なないでよ』
すぐ近くで声がした。
顔を上げると、Aが背を向けていた。
表情が分からない。
『さようなら』
小さな声で言った。
そして、雨の中小さな背中を見せながら歩き出した。
安吾は何も言わず、Aとは逆方向に走り出す。
もし、太宰達が安吾を許せたのなら。
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作者名：MANA☆ | 作成日時：2024年2月12日 11時
