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「おい、ひろみつ、どうした?なにかあったのか??」


「はっ、は、っ、……どう、どうしよっ……Aちゃ、けが、して……っ、ぼく、ぼく、ヒュッ、は……っ」




「っ、……だいじょーぶだ、ひろみつ。わたしはケガしてない。だからおちつけ」








苦しげな呼吸を繰り返す景光の体を抱きしめて、不規則に膨らむ背中を優しく撫でる。



恐らく既に恐怖心でいっぱいだった所に、私と父親が血まみれで帰ってきたから、キャパオーバーしたのだろう。


こんなことならちゃんと血を拭いてくるべきだったな。

完全に失念してた。





ビニール袋を取りに行ってくれたおばさんの帰りを待つ間も、途切れ途切れに「Aちゃん」と何度も呟いて、私の服をキツく握りしめてくる景光。



震える体は少しずつ私を追い越そうとしているのに、今だけはこの手のひらに収まってしまいそうなほど、小さく小さく感じた。







______あれから呼吸が落ち着くと共に寝入ってしまった景光はおばさんに預けて、男を連行して行った県警にはおじさんと一緒にあれこれ事情を聞かれることとなった。




警察の人には「お嬢ちゃんはもう夜も遅いし明日にしよっか?」とか言われたが、生憎夜更かしには慣れているし、何より明日は昼頃の新幹線に乗って実家に帰る予定だ。


朝っぱらから事情聴取なんてごめんなので深夜のうちに終わらせてもらった。




ついでにあまりにも的確に答えすぎて年齢サバ読み説疑われたのだが。


私もできることならサバ読みであってほしかったよ。(白目)








「……おばさん、ひろみつは?」


「あの子ならまだ寝てるわ。きっと昨日の件で疲れたのね」



「ひとりにしてだいじょーぶなの?おじさん、まだびょーいんだし」



「えぇ。だからAちゃんを見送ったら、急いで帰るつもりよ」








今のあの子を一人にしておけないから、と眉を八の字に下げるおばさん。


その顔はうちの母親にそっくりで、誰かの母親になると皆こういう表情を浮かべるのだろうか、なんてぼんやり思う。





おばさんに見送られながら帰りの新幹線に乗り込んで、窓の外に視線を向ける。








「……感覚、鈍ったかもな」








大人も子供も、誰しもが死に対して、少なからずの恐怖を抱いている。



血を見て動揺し、殺されそうになって腰を抜かす。

それが俗にいう“普通”の感覚。





……なのに。





一度死を体験したせいだろうか。


包丁を持つあの男に立ち向かった私に、【恐怖】の二文字は存在しなかった。




……慣れって怖。









5.火のない所の煙→←*



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(プロフ) - いつまでも続き待ってます。 (12月22日 23時) (レス) id: 2607c1000c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 尊い、、、むり、、、これは尊すぎる好き (9月28日 1時) (レス) @page23 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 好きです!これからも無理せず頑張ってください!更新を楽しみにしてます (8月12日 15時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
黒谷桃里(プロフ) - ウッッッッッ!!!!めちゃくちゃ好きです!!!!可愛い…… (7月11日 2時) (レス) id: eae39e15db (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - もう更新はしないのでしょうか? (5月18日 23時) (レス) @page23 id: cae0d8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年6月26日 16時

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