# ページ7
仕事が終わってしまった。
逃げ場がない。
局から出れば近くに停めてある
スモークのついた馬鹿でかい外車。
後頭部座席が開けば、
北山は手をかざしてこちらに合図を送った。
久しぶりに俺らと北山が共演するんだ。
マスコミがこの機会を狙ってないわけがない。
そこを張ってるマスコミには気づいてる。
それに北山も気付いてるはずだ。
きっと故意的に撮られやすいところで
撮られやすいように身を乗り出しているに違いない。
その策略、乗ってやるよ。
そのまままっすぐ車まで行って
ゆっくりなるべく格好つけて乗り込む。
せめて格好の悪い写真でないように。
「＿＿＿行ってー。」
相変わらず距離感の近い北山は
マネージャーであろう人間を下の名前で呼び
発進の意を伝える。
「おつかれ。」
「北山もお疲れ様」
「うい〜」
「なんであんな挑発したの？」
「ん〜？なんの話」
「とぼけんなよ。
...まぁいいけど」
それから飯屋に着くまで無言だった。
「久しぶりの飲みにかんぱ〜い♡」
「乾杯。」
んっっっまっ！とか言って
俺の目の前で百面相する北山。
「やっぱお高いとこの酒は違いますねぇ〜」
なんてトングを俺に渡さずに
ずっと自分で焼いている。
なすすべもなく北山の顔を見ていると、
以前との顔の違いがあまりにも明白すぎて辛くなった。
��卒業��の話が出てからずっと疲れたような目で
酷く痩せてはやつれていて、
泣くのを我慢するような顔ばかりだった。
生き生きとした目で、
肉を焼いては
健康的に肉のついた頬で、
肉を頬張る。
「見すぎ〜
俺の顔ホントにすきだよな」
その通りだ。
依然としてマリや七五三掛といった可愛い顔が好きな俺は
北山の顔が嫌いなわけがなかった。
「お前も食えよ。冷えちまうぞ」
「いただきます。」
「ど？」
「美味いよ」
「ん。よかった。」
ニッて目を月形にし、星が弾けるように笑う。
そんな笑顔を肉眼で見たのはいつぶりだったか。
「なぁ。俺藤ヶ谷のこと好きだよ。」
「ふーん...
って、え」
え？
「なはっ、驚いてる〜」
ケラケラと笑う北山。
「んや、からかうなよ、びっくりした。
そういえばお前そういうやつだったよな。」
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作者名：Cuz | 作成日時：2019年8月26日 12時
