夜。 ページ14
「ただいまー」
「うい」
ライブ衣装でリハーサル通しで
クタクタの俺を家に迎えるのは、
グループを抜けてからゆるりと活動しているミツ。
リビングについて一通りの雑談
「アイツら元気そー?」
そう言ってグループの話題を持ち出す。
「そんなに変わらずなんじゃない?
...まあ、B型の2人は見る通りだし、健永も無理してるのかな」
「だよなー、そこまで俺に対抗心ねえじゃん?ニカ玉
負けず嫌いの癖して慕ってくれるのわかるからなあ。
アイツらわかりやすいしどうせファンに心配されてんべ」
「そうだね、見てるとそんな感じかなー...」
「俺がしてやれることもねえしなー、
こればっかりはどうしようもねえけど、
出来れば元気だして欲しいよな。」
無理に決まってる。
俺でさえ本調子じゃなくてから回ってるのに。
「もー、そんな顔すんなって」
ってわしゃわしゃ頭を撫でてくる。
普段の俺なら止めてたかもだけど、そんな余裕もなかった。
ファンに楽しそうと言われるぐらいには、
テレビ上の俺はそんなに違和感がないらしい。
本当はこの会話に鼻の奥をツンとさせるほど苦しいのに。
演技が上手いってこういう時にどうすればいいのかわかんねえんだよな。
「お前も疲れてんだろ、風呂入ってさっさと寝よーぜ?」
優しい笑顔で脱衣所に誘導してくるから、
それに甘えて風呂に入る。
...風呂、湧いてんじゃん。
こういうとこ抜かりねえよな。
視界が滲むのを無視して身体を洗った。
.
「ん、風呂出た?」
キッチンでパソコンに向かう北山のとこへ向かう。
「湯船、ありがとうね」
「いいんだよ、寝よ」
俺を抱き寄せておでこにキスをして
寝室へ向かおうと手を引く。
「ちょっと待ってミツ、
仕事は?大丈夫なの?」
「心配すんなって、俺のはいつでもできるけど
お前のメンタル療養は今しか出来ねえだろ?
あと、俺の事誰だと思ってんの?」
振り返って得意げに笑うミツは、
やっぱり俺にとって苦しいくらいに眩しい太陽だ。
頼りがいがありすぎて、
ありすぎて、
時に虚しい。
俺が布団に入ると後に続いて入ってくるミツ。
「ゆっくり寝てな。
俺はずっとここにいるから」
ひとつの俺の大事な場所からいなくなったミツの言葉は
あまりにも信憑性がない。
「...嘘つき」
「...お前が思ってるより俺はお前のこと好きだよ」
その言葉が寝る前の最後の記憶。
____Fin
少しでもこの小説が
救いになりますように。
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作者名:Cuz | 作成日時:2019年8月26日 12時