人形と呼ぶ理由 ページ26
『まだ……、全部話せて……、ない……』
「もう十分や。お前がどれだけ辛い思いをしてきたか伝わった」
拓也君は私の頭をそっと撫でる。
「なんか自分が情けなくなってくるわ。でも、これからは逃げないでAと向き合おうって決めたから。だから今日、Aに会いに来た」
私を抱き締めながら、拓也君は微笑みながら言う。
なんだか気持ちが落ち着いてきて、涙も自然に止まった。
『……川上先輩の言ってた通り、拓也君に構ってもらって自分の気持ちを誤魔化してた部分はあったと思う。でも、冷たくされるほど拓也君の事が知りたくなって、もっと構って欲しい思うよになってた』
『だから、今は拓也君が好き……』
拓也君はより強く私を抱き締めた。
私を離さないように。
「まだ側にいてくれる?」
「うん。お前も俺から離れたらあかんで?」
「お前は俺の…………、彼女なんやから」
拓也君の頬が少し赤くなっていたのが見えた。
そんなに彼女って言うのが恥ずかしいのか。
私を人形って呼ぶ理由、少し分かったかも。
「……何で笑ってんの?」
『え?』
「主人の顔見て笑うなんて、悪いお人形さんやな」
『んっ……』
私の耳に拓也君の吐息が吹きかかる。
「ふふっ、嫌がる顔も可愛いなあ」
『あの、電車あるからそろそろ離して……』
「離れたらあかんって言うたやろ?」
久しぶりに見た、彼の不敵な笑顔。
私を独占し、満足しているその表情。
「これからもずっと、お前は俺の人形やからな?」
でも人形じゃなくて、堂々と彼女って呼んでくれたらいいのに……。
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神吉ひなの(プロフ) - ほんとに更新お願いします。いいところで止まってしまっているので、、 (2017年8月28日 14時) (レス) id: 8d3e88b876 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - きたの赤身さん» いえいえ!こちらこそすごく楽しませてもらってます!作者さんの文才に感心しっぱなしです!!笑これからも応援してます!!(*´∇`*) (2017年3月5日 12時) (レス) id: bbf1916b32 (このIDを非表示/違反報告)
きたの赤身(プロフ) - ふわりさん» コメントありがとうございました!凄い励まされたので更新頑張ります! (2017年3月5日 2時) (レス) id: 5637995c07 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - コメント失礼します!とっても面白いです!物語の世界に引き込まれました!!是非更新していただけると嬉しいです! (2017年3月2日 20時) (レス) id: bbf1916b32 (このIDを非表示/違反報告)
きたの赤身(プロフ) - 月苺さん» ありがとうございます!KOUHEIさんをブラックキャラにしていいのかと思いながら書いていたので(笑)、気に入って頂けてるなんて嬉しいです!更新頑張ります!! (2016年12月16日 15時) (レス) id: 5637995c07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きたの赤身 | 作成日時:2016年11月8日 3時