明晰夢 【短編集】

… ページ9

「いるんだ、へぇ、なんで叶わないの？」


彼にはデリカシーのデの字もないのだろうか。


『…私、その人の恋愛相談乗ってるんだよ。』


「…え、俺の他にも乗ってる人いたの？」



いないよ。



『ん、まぁ、』


どう答えていいかは分からなかったので、濁しておく。


「…へー。」


『あの、興味ないなら聞かないで…？』


「別に興味ないわけじゃないけどさ。」


よくわからなかったのが顔に出ていたのか、それに答えるように彼はいう。


「いや、俺だけじゃないんだなって思っただけ。」




…君だけだよ




なんていったら彼は、



目をまん丸にして、こっちを見てくるかな。



私の言葉を理解してくれたら、顔を赤くしてくれるかな。









彼の恋が叶うまででは、まだ、この恋に蓋はしたくない。



　







蓋をしなくてもよかったことに気付くのは、



数日後。



　

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