♯52〜初めての海〜 ページ6
水に足をつけると、砂浜よりも冷たくて、夏の日差しとコンロの熱で暑くなった身体を冷やしてくれた。
「やあっと来たな?」
ニヤリと笑った九瓏先生の黒い肌に海は似合っていて、その紫紺色の髪が艶やかに煌めいていた。
なんか、今日は皆いつもと違う。
じゃれあって遊ぶ朴と榊原先輩に水をかけられて一緒に少し深い所へ走りだす九瓏先生は、先生の様で先生じゃなかった。
いつもは先生らしくないけれど、先生としての威厳やどこかきっちりとしてところが垣間見えてはいた。
今はその逆だ。大人なんだけれど、子供みたいに遊んでは、仕草の端々に大人の男性としての余裕や艶っぽさが見える。というか、漏れ出している。
「......なんでだ?」
「なーにが?」
可愛らしく浮わを持った榊原先輩が、浅瀬でぼぼっと見ていた私を覗き込む。興奮で少し赤みがさしている歩歩も水で濡れている。綺麗で黄色に見えてしまう金髪も、ペッタリと張り付いていた。
「......先輩、意外と筋肉あったんですね」
「えぇ〜?そりゃあだって、僕だって男の子だもん。......筋肉くらいあるよ」
綺麗な金髪が映える色素の薄めな白い肌には、うっすらと、けれど男らしい筋肉が浮き出ていて。
その体は明らかに出会ってすぐの時よりもしっかりしていて、確実に男らしさを作り出すということに成功している。
私の中の榊原先輩の、女の子の様な華奢な体という印象を塗り替えざるを得なかった。
「ほら、Aちゃんも泳ごうよ!気持ちいよ!」
先輩に当然手をひかれて水の中にざぶざぶと入っていく。
海に来たことはあっても入ったことなんてなかった私は、少し怖くなって、無意識に繋がった手を強く握り、自分の方に引いてしまった。
私の所為でクンッと引っ張られて止まってしまった先輩。振り向くと、不思議そうに私を見た。けれどすぐに、私が動けないでいることに気づいて、にこりと笑った。
「Aちゃんって、もしかして海に入るの初めて?」
「え、あ、はい。......初めて、入りました。」
「ふふふっ、大丈夫だよ」
ふふっ、って笑う。金髪がキラキラと陽ざしを反射した。
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九瓏ケントのビデオカメラ
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NIL(プロフ) - 干し椎茸*さん» 初めまして!読んで下さり、ありがとうございます!青い鳥大歓迎です!これからもよろしくお願いします!! (2017年12月25日 8時) (レス) id: 3e4ae99fc9 (このIDを非表示/違反報告)
干し椎茸*(プロフ) - 初めまして!干し椎茸*と申します!いつも小説楽しく読ませていただいています!是非よろしければ青い鳥さん繋がりたいです!これからも頑張ってください! (2017年12月24日 23時) (レス) id: a817280258 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NIL | 作成日時:2017年12月24日 5時