不在着信 (ページ17)

今日:57 hit、昨日:26 hit、合計:442,315 hit

十七件：overflow ページ17

.

「うっちー、、」

「やっぱりだめだって。怒られちゃう」

掴まれた腕を引き離し、立ち止まった

「ごめんね」

颯「…なんで謝るの」

「戻るね、ありがとうまた明日」

いま降りた階段を今度は辿って

重い足を持ち上げようとした

颯「……そんなん檜山がわるいじゃん」

颯「女の子悲しませた挙句、放置って」

うっちーは私が檜山くんに好意を寄せていたことに気付いていた

「私が勝手に好きになって失恋しただけだから…」

真剣な眼差しで何か言いたげに見つめてくる

「大丈夫だから」

本当はすごくサボりたかった

だからうっちーが来た時、正直嬉しかった

颯「は？どこが大丈夫なの？」

いつもより口調がきつい

笑顔が消えた彼は好きじゃない

「もう平気！！ほらっ！」

ぎこちない笑顔で

三秒だけ笑ってみせた

颯「泣きたいときは泣いていいんだよ、無理しないで」

視界が滲んでよく分からなくて

堪えていた涙が一気にこぼれてしまった

「 … 」

少し低い位置にいたうっちーは私と同じ段に上がり

体の震えを鎮めようと彼の細い腕が

私の背中に回って優しく抱きしめられた

颯「辛かったな」

彼のしわくちゃのワイシャツが

私の涙で滲んでいった

『下校時間です』

『生徒の皆さんは素早く下校しましょう』

誰にも気付かれないように

人目に触れないように

彼はぽっかり空いた穴を埋めてくれた

.