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-風間side-
肌寒い季節だから、地下へと続くこの階段を通るのは少しAには辛いようだ。
Aは、手を温めようと何度も息を両手に吐く。
無言で下りる階段の、最後の段を下りる。
そこには少しばかりのスペースがあり、中央に肩幅ほどの箱が置いてある。
俺は手をかけ音を立てずに開けた。
「ほ、ね……？」
Aはそれをまじまじと見て聞いた。
「ああ。俺の親のものだ」
「でも……１つしか……」
箱の中にある、１つだけの人骨を、俺はじっと見たままAに話した。
「親は殺された。鬼の骨は長寿の元と言われていた頃だったため、死体は焼かれたあと骨も人間に利用された。何とか奪い返せたのが、これだ。父のものなのか、母のものなのかは分からない」
Aは黙って遺骨を見つめた。
当時の風景を、思い浮かべるように。
「辛かったよね」
「鬼の力を無力な人間が欲するのは仕方ないことだ」
「でも、親を殺されて、悲しかった？」
「人間の醜さが哀れだと思った」
「それ、だけ……？」
「ああ。人間は愚かだと感じた」
「愛を消さないで！」
Aの張り上げた声が冷たい地下に響き渡った。
「Aもね、辛いことから逃げたくて違うことで紛らわせようとした。汚い感情で埋めようとした。でも、だめなんだ。悲しみを、辛さを、苦しみを、悲しみのまま、辛さのまま、苦しみのまま受け入れないとだめなんだ。愛があるから涙が出る。捨てちゃいけないものなんだ」
「愛、だと？ そんなものはない。鬼の誇りを持っていれば事足りる」
「それは虚しいんだ！」
Aは次第に涙を流し始めた。
「要らない感情なんて、ないよ……」
Aの細い腕が、俺の腰をしっかりと抱き捕まえた。
空気が冷たいからか、……とても温かく感じた。
「ガキめ」
ふっと、俺は笑った。
「あんなに怖がっていた俺に抱擁か」
「怖くない」
「……ほう」
俺は、右腕を掴まえ上げた。
Aは反射的にそれを拒む。
「こ、これは、違うもん！」
Aは怖がったことに恥じらい顔を背けた。
俺がAを抱き上げると、驚いて短い悲鳴を上げたが、抵抗はしなかった。
俺たちは広間へ戻った。
冷えた地下が、いつも来ていたときよりも少しだけ、ほんの少しだけ温かく感じた。
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入華(プロフ) - 総ちゃんさん» 感想ありがとうございます！期待に応えられるようがんばりたいです(*'〇'*) (2016年9月27日 22時) (
レス) id: 236968fd40 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 主人公と沖田さんの関係が気になります。更新楽しみに待ってますね(*´∇｀*)。 (2016年9月26日 12時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
入華(プロフ) - 意見、質問、感想などがあれば書いてくださると嬉しいです！ (2016年9月17日 14時) (レス) id: 236968fd40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：入華 | 作成日時：2016年9月17日 14時
