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-斎藤side-
夜。
俺は見張りで、三凪Aの部屋の前に座っていた。
夜は冷えてるが、首巻きのおかげでそれほど寒くはない。
三凪は先ほど風呂から上がり部屋に戻ってきていたので、きっと髪を乾かしたらもうすぐ寝るだろう。
俺は静かに月を見た。
副長の仕事を増やしてはいけない。
ただでさえ、寝る間もなく仕事をしている副長を、これ以上疲れさせたくはない。
だから俺は、この三凪には問題を起こさせないようしっかりと目を見張っておこうと決めていた。
そのとき、すっと襖が開く。
｢……何か用か｣
部屋から出てきた三凪に視線を向ける。
｢一はどうしてここにいるの？｣
｢俺はおまえの見張りだ。おまえはどこかに行くのか｣
｢月を見たいなあって｣
｢……そうか｣
俺はまた視線を月に戻した。
三凪は襖を閉めてから、俺の隣に座った。
｢ねえ、一｣
｢なんだ｣
｢一は月が綺麗だから見てるの？｣
｢…………さあな｣
綺麗ではないのか、と言われると、月は綺麗だと思う。
だが、それが理由で見ているわけではない気がした。
｢じゃあ、月を見てなに考えてた？｣
｢副長のことだ｣
｢土方がどうかしたの？｣
言っていいものだろうか。
今日会ったばかりの三凪に言っていいものだろうか。
俺は少し考えたあと、言葉を続けた。
｢副長は、この新撰組のことをよく考えてくださっている。時には休んでほしいと思っている。だが新撰組には、たくさんの問題が入り込む｣
そのたびに副長は眉間にしわをよせ、気を張っている。
俺はそんな副長だからこそ慕っているが、それでも働き詰めはよくないと思う。
副長は、重いものをたくさん抱えている。
｢一みたいに自分のことを思ってくれる人がいると、頑張ろうって思えるよね｣
俺は隣の三凪を見た。
｢支えることで休ませることもできるよ｣
にっと、三凪は笑った。
｢……｣
｢月は人を素直にさせるんだって｣
｢……｣
ふっと笑って俺はまた月を見た。
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作者名：入華 | 作成日時：2016年9月11日 13時
