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-藤堂side-
｢火事だ！｣
ある日の巡察中に、火事が起きた。
それもかなり深刻で、発火した家から、隣の家に移り、炎は暴れるように燃えていた。
野次馬と、巡察中だった俺らでは人手が足らず、近くにいた隊士に土方さんたちを呼んでくるように言った。
歩いて３分の川を行き来する人と、それを受け取り水をかける人。
現場は緊迫していて、とても慌ただしかった。
水をかけている奴らは、あまりの炎の強さに咳き込む。
とにかく、炎をまた移さないように必死だった。
｢うわあ、これはすごい｣
背後から、総司の呆れた声が聞こえた。
振り返ると、新撰組のみんなが集まっていた。
みんなはそれぞれ状況を見て人手の足らないところに回った。
ほっとしたのも束の間、俺はある人物に目がいく。
｢何でAがいんだ！？｣
｢どうしてもってさ。まあ人手が要るしね｣
総司はそう言うが、俺は心配な気持ちが膨らむ。
｢Aは水運んできた奴から受け取って、俺に渡してくれ！｣
あまり危険じゃない位置にいてもらおうと、そう指示した。
｢わかった｣
Aは元気に走って行った。
Aが４回目の水を渡してくる。
俺は力いっぱい炎にかけた。
炎は先ほどより収まりつつあるが、周りの家に移る可能性はありそうなくらいまだ燃えていた。
燃えている家はほぼ壊れていた。
そこで俺は、はっと気づく。
１分置きくらいには俺のところへ水を運んできていたAがさっぱり姿を見せない。
｢A！｣
騒がしい中、声を張り上げて呼んでみるが返事はない。
そのとき、
｢危ないです！ 戻ってきてください！｣
俺と同じくらいの声量で絶叫する隊士の声が聞こえた。
振り向くと、発火してほぼ全壊した家の方でなく、炎が移ったけれどまだなんとか原型を保っている家の方を見て隊士が必死に呼びかけていた。
｢何があったんだよ｣
急いで駆けつけると、隊士は顔を青ざめながら早口で言った。
｢三凪さんが、中に！｣
｢ああ！？｣
それを聞いていた、土方さんの怒りじみた声と、俺たちの険しくなる顔に、隊士は一層と顔の血の気が引いた。
｢あいつ何やってんだ！｣
左之さんが声を上げた。
｢その、中に、残っていた人がいるようで、三凪さんが救助に……｣
隊士は震えた声で説明した。
その家は、入る隙間がないほど炎に包まれている。
どうやって入ったんだ？
現場は更に緊迫した状況になっていた。
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作者名：入華 | 作成日時：2016年9月11日 13時
