JUKE BOX (ページ7)

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#02 Into your eyes/ nozomu.k ページ7

あの日から何度か彼女と会ったけど、
俺たちが会う日はいつも決まって雨が降っていた。

バーでもレストランでもなく、あのカフェが俺たちの、例えて言うなら"溜まり場"のような場所だった。

二回目からは、彼女は"コーヒーはもう懲り懲りだよ"と笑い、ミルクティーを頼むようになった。

三回目、彼女は正式に結婚が決まって、婚約届けを貰いに行ったことを俺に伝えた。

四回目、彼女はこれから住む家の話、相手の両親の話、自分の親の話、彼女の不安を俺に分けるように話した。

五回目。
再会してから、もう3ヶ月が経っていた。
はじめ、それが何かはわからなかったが彼女は今までと少し違かった。

違和感を覚えながら、コーヒーを啜っていると、彼女が俺をじっと見つめながら言った。

「…こうやって会うのってさ…イケナイコト…なのかなぁ？」

「え？」

「あ、ううん！独り言！…ごめん。」

2人の呼吸だけが会話をする中、テーブルの上の彼女のケータイがなって、見憶えのある名前が表示された。

彼女はまるで隠すように急いで電話を取り、外に出た。

"中間淳太"
－高校の時に、俺を弟みたいに可愛がってくれた先輩。

彼女は帰ってきて席に着くと、今度はケータイを切って鞄にしまった。

「絢芽の旦那さんって…淳太くん…なん？」

彼女は一度大きく目を見開いて、シュンと背中を丸めて俺と目が合わないようにとでも言うように俯いた。

「…そうだよ。」

「いつから？」

「付き合い始めたのはね、高校卒業してすぐ。でも、付き合う前から、付き合うことも結婚も決まってたの。」

記憶を辿ると、確かに彼女も、淳太くんもいわゆる社長のご子息、ご令嬢だった。

共に日本を操るような大きい会社ではなかったが、許嫁で結婚が決められてても納得できるくらいの規模の会社ではあった。

「…許嫁…ってやつ？」

「簡単に言えば、そんな感じ。」

「けど、淳太くんはちゃんと絢芽のこと好きやんな？」

「うん…結婚が決められてなくても、俺は絢芽を選んどったって…。」

彼らがそんな関係で始めから結ばれていたことを知らなかった高二の俺は、淳太くんのことを純粋にライバルだと思っていた記憶が鮮明だった。

「…絢芽？…俺は、絢芽のこと友達というか…大事な先輩やって思ってる。」

「じゃあ…」

「けど、もし、絢芽がどっかで罪悪感抱えとるんなら、こうやって会うのはもうやめた方がええと思う。そんな気持ちで会うのが…イケナイコト…やろ。」