JUKE BOX (ページ4)

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#01 リッツパーティー/ takahiro.h ページ4

彼女の家の前に着くと、なぜか少し緊張した。

ーピンポン

ドアベルを鳴らしても反応はない。
仕方なくケータイを取り出して、彼女の名前を探し、電話をかけた。

ープルルルル

その音は俺の横で鳴って、ふと顔を向けると彼女がそこで目を見開いていた。

「あ。杏奈…。」
「たーくん…え、お仕事は？」

一つ一つ整理するように一生懸命言葉を紡ぐ彼女がすごく可愛くて、何もできなかった自分が少し恥ずかしかった。

「終わらせてきてん‼」
「え…？」
「俺な、杏奈にちゃんと言わなあかんことあって、それ伝えにきてん‼」
「それでサプライズで来てくれたん？」

彼女は嬉しそうに目を細め、ニコッという効果音が付きそうな笑顔で俺を見る。

「せやねんけど…失敗やなぁ笑笑」
「ううん‼ ビックリしたで‼それから…嬉しかった。」
「ほんまに？」

彼女は静かに頷くと、突然俺と自分の腕を組んで少し見上げてもう一度微笑んだ。
"ほらほら"と言いながら俺を家の中に入れる。

俺が久しぶりに見る小さな2人がけ程度のソファに座ると、彼女はその前のローテーブルに淹れたてのコーヒーを置いた。

「あ！杏奈、これ…プレゼント、あの、アヤメの花なんやけど…花言葉、俺が帰ったら調べてみてな‼」
「うん…わかった。」
「それから…。」

俺はぎゅっと強く彼女を抱きしめる。
しばらくの間忘れていた、温もりがフワッと俺に問いかける。

"お前にとって大切ってなんなん？"

少し可笑しくて誰にも気づかれないように心の中で笑った後、

「まだ分からんけど、今の俺はこうやって杏奈が近くにおることが、そんな風におってくれる杏奈が大切やな。」

と、再び心の中で答えると、ふと彼女に伝えたいことが口をついて出てきた。

「杏奈？俺、しばらく杏奈に会えんくてさ、なんかずーっと、本当になんか足りんかってん。」
「うん。」
「なんやろうってずっと考えててんけど、ここに来てみて分かってん。」
「うん？」

優しく笑って頷く彼女。

「杏奈やったわ。なんで気づかんかったんやろうな？」
「ほんまやで。」

ヘヘッと笑う彼女。

「あんな、せやから、俺、杏奈に悲しい思いさせへんように努力するから、よかったらこれからも杏奈の強さ、弱さ、全部面倒見させてくれへん？」

照れたように笑う彼女。

「お願いします。」と頷き、笑う彼女。

どの彼女も好きだ。と思う。
もう少し寄り添えると口に出せる日が来るだろうか。

来ると信じて。リッツパーティー。

END