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その後、涙が止まらなくなってしまった私に、ずっと部長は頭をポンポンしてくれた。
その様子に弟さんはまたひゅーひゅーと冷やかす。
でもその声には優しさが含まれていて、全然嫌な気持ちはしなかった。
「Aちゃん、ちょっとこっち来てくれる？」
ようやく泣き止んだ私に、お母さんはちょいちょい、って手招きした。
部長を見ると「行ってこい」って何故か少し偉そうに言われた。
手招きされたキッチンの方へ向かう。
部長と弟さんとお父さんはテレビを見て笑ってる。
「はい」
「これあげるわ」
「え？」
そう言われて渡されたものは何かのノート。
ペラッと捲るとそこにはたくさんのレシピ。
「え……」
「押しつけるつもりはないんだけど、これは櫻井家の男たちが今まで食べてきたメニューのレシピなの」
「はい」
「でも私もうレシピ覚えちゃったし、あげるわ」
ふふっと笑ってお母さんは「今日の夕飯は手巻き寿司とちらし寿司どっちがいーい？」って男衆に聞きに行った。
……一般的に見れば、これをくれると言うのは母親の味が忘れられない息子に「嫁になるあんたがこれからは作ってあげるのよ」という若干の嫌味を感じる行為だろう。
でも違うと断言できる。
だってそのノートの中には。
『初めて翔ちゃんが食べてくれた！』
『翔ちゃんナス苦手みたい。どうしたら美味しく食べてくれるかな』
『翔ちゃんが吐いちゃった。何が原因だろう。アレルギーとかあったらどうしよう』
『お母さん僕これが一番好きって言ってくれた。嬉しい』
『翔ちゃんがユウちゃんと取り合いをするほど気に入ってくれた』
『これから家族の記念日はこれを作る。決定！』
……櫻井家と、部長のこれまでの軌跡。
ただのレシピじゃない。愛情がたくさん詰まっていた。
……もし私のお母さんが生きていたら。
お母さんもこうやってしてくれていたのかもしれない。
「Aちゃん、手巻き寿司だって。一緒に作りましょう？」
またも涙腺が緩んでいることをお母さんはきっと分かってる。
「はいっ！」
家族にしてもらえるって。
家族が増えるって。
こんなに幸せなことなんだ。
そんなことに今更気付く。
……１年前、私はきっと舞い上がっていて何も見えていなかった。
お母さんと一緒に手巻き寿司の材料を用意してダイニングテーブルに広げた。
「うまそ」って笑う部長。
お父さんも弟さんも笑っている。
……私の幸せはここにあったんだ。
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やっち(プロフ) - こんにちは。読ませてもらいました。甘甘翔くん大好物です。大好き (2021年10月30日 16時) (
レス) @page49 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - emさん» ありがとうございます。私もこんな職場憧れます…！夢が詰まってます笑 また少しずつ戻ってこようと思います。またよろしくお願いします！ (2020年9月15日 5時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - ミントモモさん» ありがとうございます。少しずつですが戻ってくる予定です！またよろしくお願いします！ (2020年9月15日 5時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - かのんさん» ありがとうございます。少しづつですが戻ってこようと思います！また、他の作品も読んでいただけると嬉しいです(^^) (2020年9月15日 5時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
まよゆり(プロフ) - 懐かしい面々が出てきて、楽しかった。ニノのスーツの値段！あの数字だけが、探せなかったあの時…笑。お、おう、と押され気味に返事するニノ。マキちゃんらしいプロポーズ。可愛い2人。短編ゆっくり待ってるね。 (2020年8月31日 20時) (レス) id: cd6d41f823 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cori
| 作成日時：2019年9月7日 18時
