誰かさんの落し物（R.N） (ページ26)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:366,889 hit

26 ページ26

反射的に音の鳴った方を見ると

見たことのある黒の車が止まっており

運転席に乗っている彼は

ニコニコしながらこちらを見ていた。

その車の方へ近付くとともに窓が開き

「23時上がりって言ったやん！早よ乗り？」

と、なぜか不機嫌な永瀬さんに言われるがまま助手席に乗った。

「なんで、、？」

「んー？なにが？」

シフトレバーをドライブに動かした永瀬さんは静かに車を発進させながら言う。

「なに、、してるんですか？」

「完全な自己満やけどさ？」

まっすぐ前を向きながら永瀬さんが言う

「なーんかモヤモヤするし弁解しときたいなって思って」

「弁解？」

完全に頭にハテナが浮かんでる私を横目で見てフッと笑いながら永瀬さんは言う。

「女の人と２人でいたからって別に彼女とかそんなんじゃないから」

今私が一番欲しい言葉をサラッと言う彼。

その言葉だけでとても嬉しかった。

それはきっと

私はもう彼のことを好きになっていたから。

「なに、、それ。なんでわざわざそんなこと、、」

悟られちゃいけない、バレちゃいけない、と

少しの抵抗と強がりでそんな言葉を発す。

「勘違いしてほしくなかったから。言ったやろ？自己満やって。」

「別に、、勘違いなんて」

「でも、Aちゃんが運んできた時びっくりした気持ちもあったけど、この状況見て動揺すればいいのにーって、妬けばいいのにーって思った」

騙されちゃダメ。

思わせぶりな態度に。

この人は慣れてる、本能的に察知した。

「Aちゃんが戻る瞬間悲しそうな顔したんは俺の気のせい？」

「気のせいじゃないですか？」

今の私の顔を見られないようにまっすぐ前を向きながら答える。

「別に期待はしたかったけど、そんな顔させたかったわけじゃないから弁解しようとしたのにAちゃんそっから運びにこーへんし」

突然ムスッとしたように言う永瀬さん。

「トイレ行こうとしてたまたま部屋出たらAちゃんいたから話しかけたのに速攻戻ってまうし」

さらにムスッとする永瀬さん

「23時上がりて言うから待ってたのに出てきたの23時半やし！」

「プッッッ」

堪えきれなくなった私はついに吹き出した。