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221話 貴方side ページ35

「自分が誰だか分かりますか?」

自分が誰だか
それくらいは分かるはず

『山南A
……吉田松陽の弟子です』

「吉田松陽?ですか
それでは次はご職業は何をなされているのですか?」

なんだったっけ?
確か何か大切なものを守っていたような

『何かを守る仕事だった気がします』

「他に覚えている事はありますか?」

なんかモヤモヤして思い出せない
違和感はあってもその違和感の正体が分からない

『自分のこともあんまり思い出せないですね
なんだか靄がかかったようにぼんやりしてて』

「なるほど」

松陽先生の事ははっきり思い出せるのに自分のこともあの人達の事も思い出せない

『思い出せますかね?』

「何かきっかけがあればきっと思い出せますよ」

『そうですか
ありがとうございます』

きっかけなんてあるのかな?
先生はこの町にいないっぽいし
あ、向こうから話が聞こえる
多分私の記憶のことだろうな

『迷惑かけちゃったな』

せっかく助けてくださったのに
悪いことしちゃったな

「体調はどうだ?Aちゃん」

『えっと、その』

「あー自己紹介がまだだったな
俺は近藤勲君の上司だ」

「俺は一ノ瀬和哉
貴方の部下です!」

「私は梓です
貴方は私のご主人様なんです!」

『……ご主人様?』

「えーっとその」

焦ってる
聞いちゃダメだったかな?

『あ、嫌だったら話さなくてもいいよ』

「まぁ病院で話すような事ではないですから
あ、そうだ今日退院してもいいみたいですし甘味屋行きますか?」

「確かにA様が混乱するかもしれないから接近禁止って言われてましたからね」

『甘味屋?』

「甘いものが沢山あるんです
A様は甘いものが好きだったので記憶の鍵になるかなって」

「外にはトシ達が待ってるからな」

『トシ?』

「あー土方十四郎
真選組の鬼の副長だ」

『鬼の副長』

知らないことばかりだ
思い出せそうにもない

「ゆっくり思い出せばいい
焦る必要はないさ」

『焦りますよ
迷惑かけたくないんです』

「ほんとAちゃんらしいな」

なんか暖かい
この人の下で働いてたのもなんかわかる

「Aさーん!こっちですよ」

『近藤さん、私ってこんなに慕われるような人間なんですね』

「あぁ、Aちゃんは凄いやつだ」

ほんとにそんなに凄いのかな?

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作者名: | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php  
作成日時:2020年7月11日 21時

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