平凡すぎるわ旦那様 ページ47
あれから沖田は変わらず側にいるのに一言も口を聞いてない。
すごいよね逆に四六時中一緒にいるのに話さなくても成立するんだから実は軽薄なものだったのかもしれない。私たちの関係なんて
「Aさん?どうされました?」
「あ、次郎さん何でもないんです。それでお話なんでしたっけ?」
この時期になるとやたらとパーティーが多くてかなわない。あまり得意ではないお酒を片手にお見合い相手と"ご歓談"と言うやつだ。楽しくないけど
「今度うちの持ってるキウイ農場が世界一大きなキウイの認定式をやるんです。もしよかったらパートナーとしてパーティーに参加しませんか?」
製薬会社のくせに農場を持ってるのか
「世界一、大きなキウイ。いいですね」
楽しみですと微笑むと次郎はだらりと目尻を下げた。
良くも悪くも平凡すぎる男だ。話は自分の家のことばかりで退屈だけど、悪い人ではない。やたらお酒を勧めて来るのも我慢できる。
ただ、どうにも結婚と言われるとピンとこない。
この男が将来国内有数の財閥である久遠グループを牛耳れるのかと言われると多分無理。
だけど、今日は1メートルほど離れて控えている沖田の手前やっぱりやめますとも言えないからムキになって手元の酒を煽る。
味はよくわからなかった。
「うちのキウイは大きいのに味もしっかりしていて……」
「ええ」
まだキウイの話だった。テキトーに相槌を打っては流れて行くキウイキウイというワード。
脳内で全部オキタオキタに変換されてはイライラして来る、
「少し、外に出ましょうか」
「はい」
だんだんお酒が回って来たのか頭がぼーっとしてきて、多分風に当てようとしてくれてるんだと思う。
目まぐるしく音のなる会場を出てバルコニーに出る。
「はい、Aさん新しいお酒」
「ありがとうございます」
さっきからガブガブ飲んでるから好きだと思われてるのかな。グラスの薄いピンクの中に泡が踊っていた
「僕たちの将来に乾杯」
「乾杯」
次郎さんに言われると寒っと思ってしまって苦笑いを浮かべないうちにグラスを煽る。
「っ…………これ、なんの」
バルコニーの手すりに手をついたもののうまく体を支えられずに座り込む。
ぐるぐる世界が回ってやっとお酒は怖いと思った。
「早く夫婦になりましょうねAさん」
そんなに久遠が欲しいのね。なんて人ごとのように思いながら遠のく意識をあっけなく手放す。
既成事実でもなんでも作ればいいのよそしたら沖田もくやし、がる。いや、ないな
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ミユ(プロフ) - パスワードを教えてほしいです! (2018年8月13日 1時) (レス) id: 9c5031f758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作成日時:2017年8月18日 3時