どんな世界も(完結編ネタ注意!) ページ21
突然江戸を謎の奇病が襲ったのは何年前のかもはやわからない。ちょうどそのあたりで犯罪者スレスレのあの男が姿を消したのはよく覚えてる。
Aはあの男に結構懐いてて、その時はちょっとした事件にはなったが、まさかあの男が死ぬわけもないしどうせどこぞで飲み歩いてるうちに金がなくなってヤクザにでも追われてるんだろうと(それはそれで物騒な話だが)居なくなって三ヶ月も経てば元気を取り戻してた。
旦那が俺たちの生活に何か影響があったとも思えないが居なくなると環境がなし崩しに変化した
俺らの大将が投獄されたこと俺らは警察という地位を捨てたこと
色々起こっても案外Aが居れば俺の中の世界は、平穏を保っていて、元々ただの人殺しみたいなもんだった俺には攘夷も性に合ってた。
それもすべてAがいたからこそだった
「髪の毛伸びたね」
「結わねぇと腰までくる」
いつも触りたがるから少し腰を屈めて手が届くようにしてやる。
こんなに長くなった髪でも立っていてはAに届かない。
横になっているAでは。
あらゆることの日付やら起こった年ですら覚えてないような俺でもAが病気になった一年前の7月8日のことは死ぬまで忘れられない。
逆刃刀を持ち出した俺に誕生日プレゼントで鞘飾りを買ってくれた帰り道
髪の毛でも伸ばしてみたら?と冗談を言いながら四歩。Aの最後の四歩
あれから験でも担ぐように俺は髪の毛を伸ばし始めた。Aが良くなるまで死んでも髪は切らないときめた。
倒れた日から三ヶ月も経たないうちに綺麗だった烏の濡れ羽色の髪の毛はすっかり色を失い睫毛までもが雪を積もらせたみたいに白くなった。
「髪の毛切ろうかな」
「なんだよ急に。梳かすの痛かったか?」
白くなった髪に毎日俺が櫛を入れる。今までは知りもしなかった髪の手入れにすっかり詳しくなってしまった。
「私も何か変わろうかなって」
そういえば俺が江戸言葉をやめたのだけはAがひどく残念がっていた。
「お前は変わるなよ。世の中はこんなになっちまったがお前だけは」
どこぞの流浪人のように語尾にござるを付けるとAのツボに入って話が成立しないからこいつの前ではいつも標準語で、まるで武州にいた頃のように。
「そろそろ時間かな?」
「あぁ、そうだな」
帰り際は目が悪くなったAの顔に近づいてお互いの顔を見る。頰を包む手はいつも冷たい。
「ん」
最後にそっと唇を押し付けて満足気に微笑んだのを確認してから顔を話す。
「また明日」
*2→←ただの新婚とは言えません「2.嬉し恥ずかしくは無い初夜」
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ミユ(プロフ) - パスワードを教えてほしいです! (2018年8月13日 1時) (レス) id: 9c5031f758 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作成日時:2017年8月18日 3時