君がかけた最後の呪い【沖田総悟】

夕焼け ページ10

3年前

「わ！！！すごいっ」

「だろ」

「ぶっちゃけ総悟の秘密の場所なんて期待してなかったけどこれはすごい！綺麗！」

「聞き捨てならねェな。見直したかィ」

「うん！！！」


沖田が1日の終わりにAを連れてきたのは江戸の向こうに沈んでいく夕日が一望できる小高い丘。

Aが江戸に来てからの1年間、非番のたびに色々な所へ連れ回したがとっておきは最後まで残しておいたらしい。


赤々とした夕焼けが江戸の昼を燃やし、繁華街の夜を連れてくるひと時。


「街からは少し離れてるお陰で人は来ねェ。サボりにはうってつけでィ」

「サボりもたまには役に立つね」


無邪気にはしゃぐ姿は初めて出会った時のAとは随分と違って、夕日よりも眩しかった。


「江戸ってやっぱり素敵だね」

「上京してきて後悔はねーか」

「うん。ありがとう。総悟のおかげ」



夕日を背に振り向いてAが満面の笑みで笑う。
顔は影になってはいたがしっかり見えた。

それを見て沖田はらしからぬ優しい顔で微笑むと、


「これからも一緒にいてやらァ」

「へ？うん。ありがとう？無意識にそのつもりだった」

「だから俺と付き合え。A、お前が好きだ」


Aの後ろから夕日が沖田に降り注いでる。その顔はあまりにも真剣で。
サラサラと風にそよぐ栗毛はキラキラと光を反射せていた。


美しすぎるその一瞬に、Aが息を飲んだのも束の間。

「っ！！！」

告白の返事もせずに猛スピードで丘を駆け降りる。

「は？」


置き去りにされた沖田は、もちろんAも自分の事が好きだと思っていたからか、状況を飲み込むのに暫くかかり、先ほどとは打って変わって間抜けな声を出していた。


「やばい、やばいどうしよう。返事しなきゃ。私も好きだよって言わなきゃなのに。なんなのアイツ。きらきらしてて、心臓バクバク言うし。うわぁぁぁぁぁあ逃げちゃったよぉおおおおおお」


爆速爆声で走る女に街の人は腫れ物を見る目だったが、今のAはそんな物目に入らない。

夢中で走って行き止まりに当たったそこは、小さな文房具屋だった。というよりもなんでも置いてある雑貨屋の様な店内。



そこで、どうにも面と向かって伝えられそうにない思いを手紙に書くことを思いついたのだった。

.


.


.

「ねぇ！読んですぐ部屋に来ないでって書いたよね？読んだ？？」

「恥ずかしいとか知ったこっちゃねェ。てめぇの口から聞かせろ」

「……ｱﾅﾀﾉｺﾄｶﾞﾁｭｷﾀﾞｶﾗ」

「なんでチャンドンゴン？」

「ドンゴンに免じて許してください」

「だめ」

土方十四郎の懺悔→←最後の1通

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す