君がかけた最後の呪い【沖田総悟】

元田舎娘と万事屋 ページ35

1年前

今思い返せば、Aが普通に会話できた最後の日の出来事だ。

そして、本人もそれを知っているかのような出来事。


その日は珍しくAの方から連絡をして銀時が呼び出された。


「よっ、珍しーじゃん連絡してくるなんて」


「万事屋さんにはシティーガール大作戦から始まり、色々助けてもらいました」


「最強男ウケぶりっ子大作戦、な」


江戸に来てから3年の間にいろんな大作戦が発足しては空回りした。
そしてその度に2人の友人としての仲は深まってきた。


「今日が、最後の依頼です」


卒業式と言わんばかりの晴々しい笑顔に銀時は奥歯を噛み締める。



「実は、誰にも言ってなくて。万事屋さんに初めて話すんですけど。総悟は私が死んだ後何ヶ月か後には私のこと忘れると思うんです」


「は？そんなわけ」


「飲ませたんです。忘却薬。こっそり総悟のお茶に混ぜて」


机に置かれたのはいつも首から下げていた小瓶。中身は空だった。


「なんで、そんな」


「私はもう死にます。きっと明日にでも。嘘つけって思いますよね」


自分でもおかしいと思うんですけど、と笑う顔にはどこか決意の様なもの見える。


なるほどさっきの顔はそういうことか。
晴々しい笑顔は、本当に卒業してしまったのだ。

生涯をかけた問いから。



「Aちゃんがそう言うなら信じるが、なんでそこから忘却薬が出てくるんだよ」


「忘れて欲しいような忘れて欲しくないような。なんてずっと悩んでたんですけど、死に際になって、ある夜の事を思い出したんです」


空の瓶を見つめながらAが続ける。


「私が死んだら。総悟は長生きして、幸せになって。って約束をしたんです。
あいつにその約束を守らせないと、その為には1番邪魔なのが私ですから」


「だからって、、」


「ふふ、結局あの日の約束はお互い忘れて欲しいと言う約束に辿り着いてしまったんです。自分が言われて1番嫌だった事なのに」


銀時は何も言えなくなった。
全ては起こってしまったあとなのだ。


「朝飲ませました。今は仕事中で終わればまた帰ってきます。その前にこの話を終わらせないと」


「……それで最後の依頼ってのは？」


「これを知ってるのは万事屋さんだけだから、たまに総悟の様子を見てあげてほしいんです。私から最後の依頼」


「わかった。じゃあ最後の作戦名は、沖田くんアルソック大作戦で」



依頼成立で固く結んだ握手からいろんな思い出が吹き出してくる。


もう上京したての少女はいない。
生傷だらけの真選組で揉まれ、江戸の荒波に染まり


そして彼女は大人になった

永遠の問い、その解→←坂田銀時と最後の依頼

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す