君がかけた最後の呪い【沖田総悟】

直線距離と時間距離 ページ4

次の日に届いた手紙は季節がかなり飛んで初夏になっていた。


「毎日毎日こうも細かい悪戯されると、余計に真相が気になっちまう」


何やら花柄の便箋に変わっていたそれは今度は切手が貼ってあった。

しかし、それは

「は？8年前の日付……」

切手がないことも相当不気味だったが、かなり昔の印が押された切手はさらに不気味だ。その異様さからなのか頭が痛む。


『雨がずっと降ってて本当に暇です。そちらはいかがお過ごしですか。

いつもは梅雨になるとミツバの調子が悪くなりますが、最近は調子が良さそうなので安心してください。


この間は江戸を案内してくれてありがとう。まだ上京したての癖に江戸っ子ぶって私のことを田舎者扱いするのは少しムカついたけど楽しかったです。あと豚ばっかり見せられたのもちょっと不満です。


私のカメラの腕が良すぎて、総悟が少しほんの少しイケメンに撮れてしまったので現像した写真を送ります。
出会い系サイトにでも使ってください。A

PSガラケー買ったんですが文通とメールどっちが良いですか。ガラケーでも出会い系サイトできますか。』



今までのほうれん草、便箋はなかったが今回は確かに写真が同封されていた。

そして、それは確実に俺の横顔だった。


「ッなんだこれ……」

頭痛が酷くなる。かなりの至近距離で撮られた写真。盗撮なんかではないのがわかる。

動物園で豚に餌をやっている様だが本当に記憶にない。


8年前、江戸を案内、動物園での写真


ピースは揃っている。それが示すのはこれは悪戯ではなく紛れもなく俺が取った行動と俺が受け取った手紙であること。



「なんだ……俺ァ、何を…忘れて」

何か忘れてる、思い出そうとする度頭の中をガンガンと打たれている様な感覚。ついに手紙が波の様に揺らいで暗転した。


.


.


「あのさぁ、豚ばっかり見てないでパンダ見に行こうよ」

「あァ？雌豚が何抜かしてやがる。同族嫌悪かィ？A、パンダなんぞ白黒してるだけの熊だぜ」

「田舎から遥々出てきた幼馴染を豚呼ばわりとは帰ったら絶対ミツバに言ってやるんだから」


目覚ましの音よりも聞いたであろう声がする。これは多分夢だろう。映る情景は目の前の豚ばかりで一向に声の主を確認できない。

クソっ、豚ばっか見てねェで横向け俺


どうやら当時の記憶を追体験してるだけらしい、手紙の通り豚ばかり見てたのは本当の様だ。


本当に誰なんでィお前は


ついぞ夢の中でその顔を確認することはなかった。

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