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風に攫われた紅葉 ページ22

「総悟、キスしよっか」

誓いと言わんばかりに。互いの約束を守るという口付け。


「ん」

近づいてくる顔、Aは目を閉じなかった。
お互いに見つめあったまま。そっとくっついて離れるだけのそれ。

結婚式のように恭しく、まさに誓いのキスだったが中身はそれのように祝福されるものではない。死が2人を分つまで、ではなく。死が2人を分つ時の約束。


「ねぇ。好きだよ」

「あぁ、よく知ってらァ。変わったな、A。今思えやチャンドンゴンしてた時は可愛げがあった」

「先に変わったのは総悟の方だよ」

「……いつの話してんでィ」


言わないだけで、寂しい思いをさせていたのかもしれない。手紙だけでは伝わらない武州での日々。


「小さい頃この庭でよくビニールプール出してたよね。近藤さんがくれたやつ」

「足つくのにお前が溺れたやつな」

「ミツバが野良猫に激辛せんべいあげようとして慌てて止めたこともあったよね」

「そのあとAが食って腹壊した」

「もー、恥ずかしい話ばっかり言わないで」


家一つ庭一つ、そこに思い出は落ち葉の数ほど。
積もり積もって山となる。


「あ、そうだ写真!写真撮ろ。滅多に帰ってこないし」

「はいはい。どーせ拒否権ねぇんだろ」


いつぞや江戸に来た時も持っていたカメラを縁側に置きタイマーをセットする。
10からAがカウントダウンを始めた拍子に軽く押せば

「ちょっと!!」

先ほど集めた落ち葉の山にAがダイブした。落ち葉が舞う。舞い上がった赤や山吹は秋風に攫われて、フラッシュが光った。


「もーー。変わってないって言いいたいなら口で言って!」

「好きな奴をいじめたくなるのは世の常ってな」

「そんな言葉で誤魔化されないからね」


ぶー垂れていたが、赤黄の雨に包まれたAは本当に綺麗で撮り直した物よりも最初の方が気に入ってるなんて最後まで言えなかった。


「ったく、撮りすぎでィ。一丁前にシティーガール気取りかァ?」

「何枚あってもいいじゃん。ケチ」


いつのまにかさっきした約束やら重い空気は無くなって、この時間がずっと続くとどこかで思っていた。


いつまでも一緒に居て、年老いて同じやり取りをする。
自分の置かれた環境をわすれそんな事を分不相応に考えていたのだ。


「総悟、久しぶりに一緒にお風呂入ろっか」

「ワーイヤラシー」

「入りたくないなら、いいけど?」

「ちゃんと10秒数えろよ」

「いつの話してんのよ」

真選組の罪→←呪い



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設定タグ:沖田総悟 , 真選組 , 銀魂   
作品ジャンル:アニメ
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hiyo*(プロフ) - 本当に神作品をありがとうございました。何度も読み返させてもらいます。題名から、慈愛系かなと想像はしてたのですが、想像を超えるお話で気づいたら最後まで読んでしまっていました。それほどには神作品です。本当に神作品をありがとうございました (3月22日 13時) (レス) id: 265fdb21ce (このIDを非表示/違反報告)
hiyo*(プロフ) - 沖田推しで夢小説を最近よく読んでいるのですが、こんなに夢小説で泣いたのは初めてでした。今まで小説で泣いたりすることがなく、初めての体験でした。物語が良くできていて、この先読み返した時に多分物語を知っていても尚、泣いてしまうと思います。 (3月22日 13時) (レス) @page41 id: 265fdb21ce (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最近沖田推しになり夢小説を読むようになり、このお話に辿り着きました。読むのは2度目ですが前回と同様ボロボロに泣きました とても素敵な2人の愛の物語をありがとうございます、本当にこの物語が好きでたまりません この先も泣きながら読ませてもらいます、 (3月1日 20時) (レス) @page41 id: 7f16a763e6 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 夜空さん» コメント本当にありがとうございます。とても勿体無いお言葉を頂けて、書いてよかったと思わせて頂きました。こちらこそ本当に有り難う御座います。 (2023年1月29日 22時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - 読んで、読み終わって、馬鹿みたいに泣きました。どこまでも素敵で綺麗な、愛の話でした。素敵な物語を、本当に本当にありがとうございます。 (2023年1月13日 1時) (レス) @page41 id: 2ceb4af9d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21  
作成日時:2021年10月23日 23時

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