検索窓
今日:27 hit、昨日:11 hit、合計:29,943 hit

土方十四郎の懺悔 ページ11

「副長、またこんな遅くまで仕事して。体壊さないでくださいよ」


「そういうお前もこんな夜更けまで何してんだよ」


「洗濯物に風呂掃除、今日の当番と奴がテキトーだったんでやり直しておいたんです」


畳んだ隊服を土方の隣に置く山崎。


「そうか。助かった。あいつがいた時はよかったな」

「Aちゃんはまめで仕事が早かったですからね」


Aの没後、元々自分たちでやっていた雑務が振り分けられると以前の様にはうまく回らなくなっていた。

特に、亡くなってから3ヶ月程の屯所内の荒れようは目も当てられないくらい。


「今日、沖田隊長がAちゃんの部屋に入りました」

「どうだった?」

「何も思い出せなかったみたいです」

「やっぱり思い出させない方がいいのか……」


紫煙を燻らせながら、Aとの約束を思います。



『十四郎。もし、そうごが…私のこと、忘れたら…そのまま、にしてあげて』

『おま……本気で言ってんのか?』

『うん。やくそ、くしてくれるよね?総悟に、は内緒で』

『それで、Aが。満足するなら……』


彼女は満足気な顔をしていた。
今、土方は、近藤は、真選組は、その最期の約束を破ろうとしている。




「沖田隊長は思い出したがってる様に見えます」


土方が苦い顔をしているからだろうか。山崎は励ます様な口調。


「忘れちまってる物を思い出そうとするのは人の性だろ。それが何か分かってないうち。今しか引き返せねぇ」


せめてもの罪滅ぼしにAとの約束を守りたいと思う。でも、それが本当に残された沖田のためになるのか。土方の中で未だに答えは出ていない。


「Aのことを総悟が忘れるなんて、あの時は信じちゃ居なかった。だが、本当になった今本来なら俺たちゃアイツとの約束を命をかけて守らなきゃならねェんだ……


俺たちが居なければあいつは死ななかったんだからな」


「副長。そうやって責めても、沖田隊長に忘れさせたままにしてもAちゃんはもう帰ってこないんです。アンタは選ばなきゃならない。Aちゃんと沖田隊長の思いのどちらを優先するか」


数々の別れを経験してきた土方だから選べない選択肢で。
数々の別れを経験してきた山崎だから言える言葉だった。


「あいつら、いっつも板挟みにしてきやがる」

「懐かれてるってことですよ」


死んだ者は戻ってこない。どんなに願う人が多くても。
しかし、生きてる者の明日は続いていく。

そこには明確で、残酷な、時間の距離が生まれていく一方だから。

夕日が記憶を運ぶ時→←夕焼け



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (91 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
141人がお気に入り
設定タグ:沖田総悟 , 真選組 , 銀魂   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

hiyo*(プロフ) - 本当に神作品をありがとうございました。何度も読み返させてもらいます。題名から、慈愛系かなと想像はしてたのですが、想像を超えるお話で気づいたら最後まで読んでしまっていました。それほどには神作品です。本当に神作品をありがとうございました (3月22日 13時) (レス) id: 265fdb21ce (このIDを非表示/違反報告)
hiyo*(プロフ) - 沖田推しで夢小説を最近よく読んでいるのですが、こんなに夢小説で泣いたのは初めてでした。今まで小説で泣いたりすることがなく、初めての体験でした。物語が良くできていて、この先読み返した時に多分物語を知っていても尚、泣いてしまうと思います。 (3月22日 13時) (レス) @page41 id: 265fdb21ce (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 最近沖田推しになり夢小説を読むようになり、このお話に辿り着きました。読むのは2度目ですが前回と同様ボロボロに泣きました とても素敵な2人の愛の物語をありがとうございます、本当にこの物語が好きでたまりません この先も泣きながら読ませてもらいます、 (3月1日 20時) (レス) @page41 id: 7f16a763e6 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 夜空さん» コメント本当にありがとうございます。とても勿体無いお言葉を頂けて、書いてよかったと思わせて頂きました。こちらこそ本当に有り難う御座います。 (2023年1月29日 22時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - 読んで、読み終わって、馬鹿みたいに泣きました。どこまでも素敵で綺麗な、愛の話でした。素敵な物語を、本当に本当にありがとうございます。 (2023年1月13日 1時) (レス) @page41 id: 2ceb4af9d4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21  
作成日時:2021年10月23日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。