第82訓 思い込みってすごい ページ36
午前1時、眠る京都のはずれ廃倉庫。
「反吐が出る程の悪党みると自分は正義なんじゃないかって錯覚する時があるよ」
先陣切って突入し、一階を制圧したAがふと奥にあった扉に気がついた。その中身は
「若瀬、数えて」
「はい」
人身売買の被害者達、それもかなり小さい子ばかりだ。
刑務所のような小さな部屋、というか檻がぎゅうぎゅうに置かれている。その数40
「これだけの子供が消えてて、ここにたどり着かない奉行所って本当に頭悪いよね」
「まだ新政府の配置換えでごたついてるんでしょう」
Aは御所に応援要請を出し、大きな車を向かわせた。
檻の鍵は一階で伸したやつが持っていた。
「ごめんねすぐ開けるね」と声をかけながら檻を開けていく。
また何かされるのか、と最初は怯えていた子供達もAが助けに来たのだとわかり檻から出てきた。
「お姉ちゃんスーパーヒーロー?」
「"君達"の味方だよ」
ヒーローだヒーローだと囃し立てる子供達にAは笑いかける。
若瀬は否定しないんだな、と興味深そうに眺めていた。
「っ!若瀬、子供達を外に」
「?了解です」
1番奥の檻の鍵を開けた時Aに冷たい怒りが走る。
.
.
Aはそのまま子供達を若瀬に任せ二階へあがった。
沖田の班が応戦中で、特に手こずっている様子もない。
「どーも」
「あーお前か。部下から聞いてる。姫君を助けた王子様は、いやこちらもお姫様かな?」
吹き抜けの3階の柵から偉そうに下を見下ろしている男。
身なりからもこいつがトップですよと主張が激しい。
「あんまり意味ないと思うけど、なんでこんなことするかだけ聞いとくわ」
「そこに需要があるからに決まってんだろ」
「やっぱり聞く意味なかった。そもそも、こんなゴミみたいな所業に正当な理由なってあるわけないよね」
背後から襲いかかってくる気配に抜きっぱなしの剣を逆手にもちそのまま切り捨てる。
「あーあ、また1人。勘弁してくれよ人を集めるのも簡単じゃない」
積まれている段ボールを見つけ、Aは軽々とそこから3階の柵へと乗り込んだ。
「あの子達にとってはスーパーヒーローらしいからね、ちゃんと期待に応えないとね」
「警察でもない人斬り集団が偉そうに」
「あー、そうね。間違いない。でもさ、今はあんたが捕まえてた40人の声が味方だから」
「マジョリティーの制裁か」
「物分かりいいね」
「物分かりは悪い方さ。なぜならここでみすみすやられてやるつもりはないからね」
キィンと金属と金属がぶつかる音が高く響く。
Aの手は静かな怒りで震えていた。
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時