第48訓 冬の夜 ページ49
「こう言うお店歌舞伎町には無いもんね」
「ねぇな」
俺らは一応政府から隠れている身ということもあり、落ち着いて話のできる個室の料亭に入った。
部屋からは日本庭園が見える。田舎らしい贅沢な土地の使い方だと感心していると、コトリと目の前に箱が置かれた。
「総悟に」
Aは開けてもらうのが楽しみで仕方ないと言う顔だ。
「こりゃあ」
してやられた。電子タバコなんてまたぬけぬけと嘘つきやがって。箱の中にはお高めのワイヤレスイヤホンが入っていた。
今日これの為に着飾って店で吟味しているAの事を思うと嬉しいやら、サプライズで先を越されて悔しいやら。
「スマホに変えたし、コードあったらいざって時に引っかかるし」
憎たらしくしてやったり顔を浮かべてやがるし、カウンターの決め所だろう。
「あんま気恥ずかしくて素直に言いにくいが、ありがとうな。これ礼と言っちゃなんだが」
「え」
「まー考えるこたぁ同じってこった」
「このブランド私でも知ってる……高いやつ」
こう言う時ばかりは素直に喜んだり表情に出るAが少し羨ましい。プレゼント冥利に尽きる。
「ね、私も開けていい?」
「おー早く開けやがれ」
「えっいいのこれ本当に」
「てめーの右手サイズでィ返されても困らァ」
嬉しそうに自分の手を見つめてる様子を頬杖ついて眺める。小さな赤い石が埋め込まれたリングは店頭にある時よりAの手の上の方が輝いて見えた。Aの好きな椿色だ。
「お前の右手は俺のもんって意味」
「嬉しい。ありがとう。総悟の目の色だね」
自分が思ったのと違う解釈に少し面食らうと。あれ、ちがった?とAが顔を覗き込んできた。
「それにほら、ルビーは7月の誕生石だって」
箱の中から何やら着いてる石についての説明書が出てきたらしい。色々小っ恥ずかしいことが書いてある。
「そんなこと考えもしてなかった」と否定しようと思ったが、意味を知ってさらに嬉しそうなAの顔が映る。
あながち間違いじゃ無いか。
まだ乾杯前の熱燗と一緒に否定の言葉を流し込んだ。
「お鍋お持ちしました」
タイミングがいいんだか悪いんだか、女将がカニ鍋をもってくると、お互いに箱と袋を大事にしまう。
Aはもう一度「総悟、ありがとう」と微笑んだ。照れ隠しに「こちらこそ」と返す俺たちを見て女将がニコニコしてる。
「女将さん熱燗2合追加で」
「あいよ。それじゃあごゆっくり」
いまさら乾杯を思い出してAとお猪口を合わせる。冬の夜は長い。庭に雪が降り始めていた。
第1章あとがき→←第47訓 お母さんの小言とルールは何故か破りたくなる
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愛総(プロフ) - おひるのかねさん» ご指摘ありがとうございます!誤字だらけでごめんなさい泣 この後も誤字ってると思いますが、大目に見て頂けますと幸いです! (2月11日 2時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
おひるのかね - コメント失礼します。いつも楽しく拝見させていただいております。 第一訓の「伊三郎」は「異三郎」ではないでしょうか? (11月19日 17時) (レス) @page2 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんばんは!コメント有り難う御座います。当方連載中のシリーズになってる血風帳、剣風帳とは繋がっています!(シリーズ一覧からご覧ください)その他の私の作品とは繋がっておりません。こちらで回答になってますでしょうか (2023年3月18日 4時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは^_^はじめまして。このお話って他の作品と繋がってますか?急な質問、すみませんm(__)m (2023年3月17日 23時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 雪妃さん» あけましておめでとうございます。もったいないお言葉ありがとうございます!一層精進いたしますので今年もよろしくお願いします。 (2018年1月1日 12時) (レス) id: f37a23b178 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2017年12月28日 2時