真選組血風帳 壱【沖田総悟】

第43訓 知らぬが仏とはいえ全く知らなければ知りたくもならない ページ44

何かある。

勘は鋭い方だ。きな臭さにはいの1番に気がつくからこそ過去に1人で突っ込んだ事件もある。

「しつ……っこい、ぁッ」

そろそろ慣れ親しんだAの弱いところを小突く合間も気分は尋問の様だった。

「(純粋に楽しめねぇ)」

「やっ…あ」

季節は冬になり、教え込んでしまった新たな道楽に興じる合間も謎の違和感がある。今日こそは解消してやろうと手早く体に聞いている始末だ。
サブクエストのせいか、いつもなら目眩のするほど扇情的な光景が完全に尋問室の仕事モードになってしまっていた。

「ネタは上がってんでィ。早く吐いちまった方が楽になるぜェ」

「ぜんぜんな、にいってるかわかんなッ」」

完全に根を上げてる容疑者も頑なに秘密は吐かない。結論から言えば最後まで吐かなかった。あまりにも強情な星に根負けしていつもより酷くしてしまったからか、Aは完全にダウンしてベッドに沈み込んでいる。

気のせいなのか。当てが外れたことなどないがここまで何も出てこないと少し自信がなくなる。

「俺ァAのことならおめぇより詳しいんでィ」

隠し事なんぞ許せない。こいつが隠すことなんていつも碌なものじゃないんだから。冬なのにうっすらと汗ばみ前髪が子供の様に張り付いているおでこにそっと口づける。

「そ……ご」

「あり、起こしちまったか」

「おふろ」

起き上がることを放棄したのか二本の手がズイと伸びてきた。珍しく甘えたな様子に少し口元が緩む。

「へぃへぃオヒメサマ」

腕を首に回させ横抱きする。ぎゅうと手を締めたAが俺の首元で深く息を吸う。

「んなとこの匂い嗅ぐなきめェ」

「総悟今日変だけど匂いはいつも通りだね」

自分の秘密は棚に上げて人の心配か。笑わせやがる。
少しムッとして冬の廊下を2人分の体重踏みしめて歩く。
勘が悪ければ、秘密がある事に気が付きもしなければ、こんなに頭巡らせることもなかったのにな。

一向に見えてこない状況に苛立ちながらAを抱く手をきつくする。Aは黙ったまま何も言わなかった。

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