真選組血風帳 壱【沖田総悟】

第4訓 成り行きは時としてちょうどいいところに着地する ページ5

「起きてるぜィ」

コンコンと控えめなノックの後返事を返すと少しドアに隙間が空いて長襦袢姿のAが顔を出した。


「総悟も眠れないの？」

「まぁんなとこ」


今までかなり長い間一緒にいたがこんなに気まずいことがあったか

座るところがないからベッドに並んで腰掛けたものの何を言っていいかわからない


「初恋」


不意にぼそりと呟かれた言葉に心中ドギマギするが、平静を装って隣を見る。


「初恋は兄ちゃんだけど、それを数えないなら
総悟が初め、てだと、おもう」


「なんだその確証ねぇみてーな言い方」


「わかんないんだよ。好きだけど……恋人らしいことをしたいとかじゃない、ていうか何が恋人らしいか知らないし…それに、今のままで十分だと思ってた。けど」


いつもはっきりと物を言うAにしては歯切れの悪い言い方だ。



(それほど真面目に考えてるってことかねィ)


「けど？」

先を促すと、長襦袢の袖に隠れていた腕が裾を握るのがわかった。


「明日総悟がいなくなったらって、考えたら…きっと誰よりも1番私が悲しむし、きっと返事しなかったこと後悔する。今はこんな答えしか出せなかったけど……こんな私でもいいかな」


なんだかこいつらしいと言うか
土方の妹らしいというか


「上出来でェ」


抱きしめるのはハードルが高いだろうと
もっとハードルの高いキスからお見舞いしてやった。

恋愛初心者？順番？あいにく物事の順序なんて気にしたことのない性格で

「わ、えぇー、そういうのってもっと……」

「もっとなんでィ。ムードとしてはバッチリだろ」

「もう、どうにでもなれ」


負けず嫌いが過ぎる。
勢いでぶつかってきたキスは下手くそで歯がぶつかって嫌な音がした

これは大人のキスから教えてやらねぇとな


「教えることが多すぎらァ」

「べ、別に知らなくてもいいことでしょ」

「俺が困る」

「……一生困っててください」

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