第37訓 大浴場っていうのはどのくらい入浴剤入れるもんなの ページ38
「Aさぁーん、今日の入浴剤お好きな金木犀にしたんすよ〜。どうっすか?」
「うん」
「副隊長湯加減どうすか」
「うん」
「副隊長、一緒に入っていいですか」
「うん」
「まじか……入りますよ!?」
「おいてめェら、何やってんでィ」
結局夜まで兄と一言も話さずどこかぼーっとしているAに隊士たちは甲斐甲斐しく世話を焼くのだがどうにも上の空らしい。
うん、うん、とそれしか返事をしない。
脱衣所でなるバズーカの爆音にも気がつかず一つため息が漏れる。
「A。入るぜ」
「うん」
隊士たちを痛めつけ終わったのかタオル一枚の沖田が戸を開けても何も反応を見せず、湯船まで近づいて来た時ようやくAが目を向けた。
「な、な、なにやってんの!」
「お前が入っていいっつったんでェ」
「言ってないよ!」
「いいやしたァ〜」
普段ならここで引き下がるような女ではないのに沖田がイチョウ色の湯に足を踏み入れると強気な口は鳴りを潜める。
「来い」
重ねて不気味なことに沖田が白い手を引けば湯船の底を蹴って大人しく足の間に収まった。
なにを考えているのかはたまたなにも考えてないのか。
光のない目線の先にはなにがあるのか、なにも見ていないのか。
「ってて、滲みる」
ひとまず柔い肌を腕の中に閉じ込めると沖田は恨みがましく耳元で声を漏らす。
痛むのはもちろん先日背中についた引っ掻き傷だ。それがわかったのかAは心配そうに首をひねった。
「ごめん」
「やっと話が噛み合った」
沖田は寄せてた眉をすっと戻してアンバーの瞳を覗き込む。想像通りその目の中には自分の顔がいっぱいいっぱいに写っている。
「頭洗ってやらァ」
何を言われるのかと少し身構えていたAの呆気にとられた顔にキスを落として、子供を抱き上げるように湯船から引き上げた。
さすがは鍛えているだけあってかなりの筋力だ。
「のぼせるといけねェ。話はあとな」
大人しく目を閉じたAを鏡ごしに見てから、沖田はその手に自分が洗う時より少し多くシャンプーをだした。
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愛総(プロフ) - おひるのかねさん» ご指摘ありがとうございます!誤字だらけでごめんなさい泣 この後も誤字ってると思いますが、大目に見て頂けますと幸いです! (2月11日 2時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
おひるのかね - コメント失礼します。いつも楽しく拝見させていただいております。 第一訓の「伊三郎」は「異三郎」ではないでしょうか? (11月19日 17時) (レス) @page2 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんばんは!コメント有り難う御座います。当方連載中のシリーズになってる血風帳、剣風帳とは繋がっています!(シリーズ一覧からご覧ください)その他の私の作品とは繋がっておりません。こちらで回答になってますでしょうか (2023年3月18日 4時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは^_^はじめまして。このお話って他の作品と繋がってますか?急な質問、すみませんm(__)m (2023年3月17日 23時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 雪妃さん» あけましておめでとうございます。もったいないお言葉ありがとうございます!一層精進いたしますので今年もよろしくお願いします。 (2018年1月1日 12時) (レス) id: f37a23b178 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2017年12月28日 2時