第36訓 両成敗が止まらない ページ37
「もう、兄ちゃんなんて知らない」
Aちゃんのその声がただでさえ凍っていたその場の空気を、冬の北の大地に変えた。
まったく困った兄妹だ。
意地の張り合いとなると長引くだろうなぁ。
「ったく。待ちやがれ」
竹刀を片付けた沖田隊長が横を通り過ぎていく。
Aちゃんを追いかけるのももはや沖田隊長のお役目なのか。これはさすがの副長も兄としてなかなかキツいものがあるだろう。
「今回ばかしはあんたが悪いですよ。副長」
「うっせぇ。鉄、氷持ってこい」
「はいっ」
鉄が走り、
『やっぱりAさんには誰も勝てねぇか』隊士たちはそう言いながら去って行った。
「あれ、何やってんだトシ、ザキ」
「局長は来るのが遅すぎます」
山崎退、人生で上司に呆れた回数は数知れませんが、1日にこんなにも呆れたのは初めてです。
.
「はっはっはっ!それは災難だなトシ!いや、この場合は総悟が災難か?」
「呑気に笑ってる場合じゃないんです!こんな時に兄妹喧嘩なんて」
顛末を聞いて笑う局長に事の重大さを強調するも全く響いてないらしい。
副長も、当事者なだけに氷を当て苦い顔をしている。
「喧嘩なんて滅多にしないんだからいいんじゃないか?せっかくAちゃんと一緒に居られる時間が増えたんだ。家族で向き合うべきだろう」
家族…か。Aちゃんには副長しかいなくて、
副長にはAちゃんしかいない。
それがこんな結果を生むとは。
ミツバさんの時も思ったが、
「あんたは本当に不器用ですね」
「言ってやるな山崎。トシは昔からずっと不器用なんだ。いつも上手くやるのはAちゃんでな」
俺の知らない話を聞くたびに少しの疎外感を感じるが、この人たちのつきない思い出話の面白さがすぐにそれをかき消す。
「Aちゃんは器用ですからね」
「そうなんだよ!俺たちはみんな不器用だろ?トシは言わずもがな、総悟だって一見器用に見えて変にひねくれちまってる。Aちゃんがいなかったらとっくにバラバラだったかもしれない」
副長の妹なのに、まるで局長の妹でもあるように自慢げに話す。
「時々テンパってますけどね」
「それが可愛くてみんな構っちまうんだよぉ。なぁ?トシ」
「タバコ切れた。部屋に帰る」
フォローの天才の名が泣きますよ、とは言えず、新たに火をつけた副長の背中を見送った。
「タバコ、まだあるじゃないですか」
「こりゃあ長引きそうだなぁ。頼んだぞ山崎」
「あんたさっきは喧嘩すればいいって……」
「喧嘩は仲直りまでがワンセットだ」
第37訓 大浴場っていうのはどのくらい入浴剤入れるもんなの→←第35訓 あれから数日っていうのは話の切り替えの常套手段
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愛総(プロフ) - おひるのかねさん» ご指摘ありがとうございます!誤字だらけでごめんなさい泣 この後も誤字ってると思いますが、大目に見て頂けますと幸いです! (2月11日 2時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
おひるのかね - コメント失礼します。いつも楽しく拝見させていただいております。 第一訓の「伊三郎」は「異三郎」ではないでしょうか? (11月19日 17時) (レス) @page2 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんばんは!コメント有り難う御座います。当方連載中のシリーズになってる血風帳、剣風帳とは繋がっています!(シリーズ一覧からご覧ください)その他の私の作品とは繋がっておりません。こちらで回答になってますでしょうか (2023年3月18日 4時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは^_^はじめまして。このお話って他の作品と繋がってますか?急な質問、すみませんm(__)m (2023年3月17日 23時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 雪妃さん» あけましておめでとうございます。もったいないお言葉ありがとうございます!一層精進いたしますので今年もよろしくお願いします。 (2018年1月1日 12時) (レス) id: f37a23b178 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2017年12月28日 2時