第18訓 兄弟は結婚できない ページ19
はじめにことが起こったのはいつだったか……細かくは思い出せない。
まだ俺の背が垣根の半分にも満たない頃だ。
「沖田先輩っ何してるんスか」
「げ、あっちいけ」
竹刀を肩に担いで呑気にポニーテールを揺らしてきたそいつの視界から俺は覗き見のために空けた穴を隠した。
木の隙間の穴だったから塞げば簡単に草が覆い隠したし、Aの手が伸びてそこに触れればまた簡単に穴を作った。
「あ、兄ちゃん!と、ミツバ?」
あっちいけなんてAが聞くわけもなく人の好意を無下にして結局自分が傷つく。
「だから、あっちいけっていっただろ」
多分あの頃の俺たちは全く同じことを考えていた。
お互いにお互いの唯一の家族を、お互いの兄姉にとられると。
「にいちゃんのばか」
ふいっと顔をそらして穴をそのままにAは道場への道を歩き出した。
泣いてた。
もう昔の話で細かいことは曖昧だがそれだけは確かだ。俺に悟られないように声を殺しながら、道をゆっくり歩いていく。
「おい、まてよ」
「さっきはあっちいけっていったり!待てっていったり!」
追いかけないのが正解だったろうか。少し肩に手をかけたことを後悔した
いや、多分今も昔も放っておくなんて選択肢はないんだと思う。
振り向いた泣き顔があまりにもガキらしくて
それこそ黒蝕。俺の心にAが浸食してきた記念すべき初めての日だ。
「でかい声出すなって……」
やっとかけた言葉がそれだったのだが、次の時にはAの声に気がついた土方と姉上が出てきて、状況的に俺が怒られるのは明白だった。
「どうしたA」
まだ小さかった体を土方が抱き上げてAは自分のだと言わんばかりに首に抱きついていた。
「総ちゃん、女の子を泣かせちゃいけません」
姉上には叱られるし、最悪だった。俺が悪いみたいに言うけどあんたらが悪いんだ。と思ってても言えなかった。言えば俺だって泣きそうだったから。
「ごめんなさいして」
そう言う姉上の手を俺も俺のものだと言うように強く握って何も言わなかった。
「いや、こいつはいじめられたくらいで泣くようなやつじゃない。沖田先輩、気にしないでください」
「ごめんなさいねAちゃん」
またな、と土方さんは素っ気なくこぼして道場ではなく自宅の方に歩を進めた。
どうしたんだよ、と声をかけられてるのをじぃっと見送って俺も姉上の手を引いて家に戻ったのを覚えてる
土方のポニーテールに嫌にムカついて、あの頃は姉上とお揃いだからだ思っていたが、
今ならわかる。
兄妹の証である黒が羨ましかった。
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愛総(プロフ) - おひるのかねさん» ご指摘ありがとうございます!誤字だらけでごめんなさい泣 この後も誤字ってると思いますが、大目に見て頂けますと幸いです! (2月11日 2時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
おひるのかね - コメント失礼します。いつも楽しく拝見させていただいております。 第一訓の「伊三郎」は「異三郎」ではないでしょうか? (11月19日 17時) (レス) @page2 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» こんばんは!コメント有り難う御座います。当方連載中のシリーズになってる血風帳、剣風帳とは繋がっています!(シリーズ一覧からご覧ください)その他の私の作品とは繋がっておりません。こちらで回答になってますでしょうか (2023年3月18日 4時) (レス) id: 7df001d406 (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - こんばんは^_^はじめまして。このお話って他の作品と繋がってますか?急な質問、すみませんm(__)m (2023年3月17日 23時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
愛総(プロフ) - 雪妃さん» あけましておめでとうございます。もったいないお言葉ありがとうございます!一層精進いたしますので今年もよろしくお願いします。 (2018年1月1日 12時) (レス) id: f37a23b178 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2017年12月28日 2時