真選組血風帳 壱【沖田総悟】

第1訓 いつもと違う部屋だとなんかよく寝られない ページ2

「今日からお世話になります」

「くつろいでいってください」

真選組はまず佐々木の別邸にお世話になることになった。

この別邸を一人で管理している家政婦は妾の子と揶揄されていた鉄を可愛がっていたらしく、
旦那様ももうおいでにならないですし、とこっそり貸してくれたのだ。


「異三郎殿の一件お悔やみ申し上げます」

「人付き合いの苦手だった異三郎坊ちゃんにこんなにお友達ができて婆は嬉しいです」



家政婦は少し涙を浮かべながら真選組の面々に深々と頭を下げた。


「ここへは月一でしか参りません。皆さま自分の家だと思っておくつろぎになって」


ここから少し先に自分の家があるらしく鉄と久方ぶりの会話を弾ませながら家へ帰っていった。




名門佐々木一家の別邸なだけあってかなり大きな洋館だ。
ただ幕吏ということもあって森の中に隠れるように立っていた。今の真選組にはちょうど良すぎる物件。


「部屋割りを出す。1番隊秋山から…………




大まかな割り当てや部屋の並びは屯所の時と同じになるようにと近藤からの配慮だった。
一階には大広間や応接室、風呂、キッチン
二階から隊士が割り当てられ
三階は幹部の部屋が並んだ。



……なるべく館からは出ず、買い物は二人一組、担当日に行くように。解散」



少し修学旅行のような喧騒。
船から下ろした荷物を持ち上げながらAが階段を登っていると

「貸せ」

「え、あ、ありがとう」

「……おう」


総悟の普段なら絶対にありえない優しさに、少し不気味に思うも、船での一件でいつも通りに話せない。

２つの荷物を持った後ろ姿はすぐに遠ざかってしまった

「お前ら喧嘩でもしたのか？」

「ううん。してない」


へぇー、と訝しがるように土方はAと一緒に階段を登った。


「兄ちゃん」

「なんだよ」

「ミツバに告白したことある？」

「な、おまっ、急に……」

「ないよねヘタレだもんね」


「土方兄妹止まってないで早くいってください。後ろ詰まってんだから」


二人の話は途中で中断されたが妹の様子から兄は何かを察したらしく、三階についた時再び口を開いた。


「恋愛はわかんねぇがな、明日亡くしちまうかもしれないと思って接することだな」


ミツバのことをひどく後悔してるのはAは同じで、そんな兄の言葉には説得力がありすぎて怖かった。


「兄ちゃんは認めねぇぞ」

「別に何もないってば」


口ではそう言いつつもせめて妹にはと思わずにはいられない土方と

兄に幸せになって欲しかったAの気持ちはお互いには伝わらない。

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