あなたのことは苦手です。〈佐野玲於〉

▽　玲於 ページ3

今日は新しいメイク担当が来るらしい。




メンバーは可愛い子が良いとか言ってるけど、俺は正直期待してない。




というか、別にどうでもいい。




今までの担当は、絡みがウザくて、あからさまにアピールしてくるやつだったり、そんなこと思ってれば次に来たのは静かで存在感のない、幽霊みたいなやつだった。




要するに、いまんとこハズレばっか。




でも、そんなのは関係ない。




俺は椅子に座ってるだけ。




メイクをしてるやつに興味を抱くわけじゃない。




そのとき、ガチャっと開き始めたドア。




携帯の画面を見てる俺とは違ってドアに熱い視線を送る他のメンバー。




期待したって無駄だよ、きっと。




望んでるようなやつが来るなんて、それはきっとごく限られた可能性。




『今日から皆さんの担当になりました！一条Aです！よろしくお願いします！』




そうニコニコの笑顔で言ってくる。




メンバーの様子からすると、そのごく限られた可能性に当てはまるやつだったんだろう。




でも俺は騒ぐことなんてできなかった。




こいつが、すごく嫌だった。




見てるとなんかイライラするし。




なんで勝手にムカついてんの、俺。




なんもしてねーじゃん。




……意味分かんねー。




亜「あ、俺らのことは知ってる？」




『はい！テレビで見させていただいてます！』




その言葉にまた盛り上がるメンバー。




俺は何もかもが気に入らなかった。




6人が質問のオンパレードを繰り広げる中、俺はただ一人頑なに携帯の画面を見つめる。




でもそんなの頭に入らなくて、顔を上げて騒がしい方を見る。




夢中なのか、俺が輪の中にいないことに気づいてない。




そう思えば、お前がすっと俺の近くに来て




『佐野さん…ですよね？ダンス、お上手ですね！』




玲「なんてそんな無理してまで笑うわけ」




気づけばそんな言葉が出ていた。

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