あなたのことは苦手です。〈佐野玲於〉

▽ you ページ2

朝、起きれば6:20。




早すぎたな、なんて思いながらリビングへ向かう。




興奮のせいでもう寝れそうにはないし、少し早いけど職場へ向かうことにした。




メイクとは言っても芸能人の方々と会うわけだから少し小綺麗にまとめる。




家を出て、駅でタクシーを捕まえる。




わがままかもしれないけど、私は満員電車が嫌いだ。




だから今までもこうしていた。




お金はかかっちゃうけど。




目的地についたらしく、お金を払い外に出る。




おっきいビル……




見た目だけでもそのすごさを物語っている。




受付の人に案内してもらって、部屋で待機する。




しばらくすれば同じ人が違う部屋へ案内してくれた。




ここです、と言われペコッと頭を下げればお礼をする暇も与えず来た道を戻っていく。




……うわ、なんかやだ…




もうすでに中から声がもれている。




そのとき、ふと




____Aってさ、人と関わるの苦手だよね。あんま笑わないし。




と言われたことを思い出した。




何度も言われた。




職場の上司、友人、奏太。




そんな気にしてなかったけど…




なぜだか今はそれがとても引っ掛かる。不安になる。




大丈夫かな。




耳を澄ませば中から絶えず笑い声が聞こえる。




なんとなく、笑ってみる。




でもやっぱり私にはこんな笑顔似合わないらしい。顔の筋肉が強張ってつりそうになる。




………人は第一印象が大事。




誰かが言ってた。




ふぅ、とため息をついて笑顔でドアを開ける。




『今日から皆さんの担当になりました！一条Aです！よろしくお願いします！』



あー、私は今きっと不自然だろう。




似合わない笑顔を浮かべて、元々そんな高くない声を少し高くして、いちいち感嘆符がつくような話し方。




でも、これが私のできる、精一杯の“女の子”だ。

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