【あんスタ】無気力なワルツを【瀬名泉】 (ページ3)

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dancing 2 ページ3

「よろしくね」

指定された席へ座ると、隣の席の彼女が静かに微笑んだ。
どうやら彼女が噂の夢ノ咲学院プロデュース学科の生徒第1号のようだ。

「よろしく」

この校舎に唯一一人しか居ない貴重な女子生徒からの歓迎の言葉に、私も悪い気はしなかった、というかぶっちゃけ嬉しかったので普段の返事の5割増しくらい明るく返答した。

このプロデュース学科は今年新設されたばかりで校舎も講師も何一つ無い為、アイドル学科と共同の施設で同じ教室で授業を受ける事になっているらしい。

そんな学科に私より一足先に配属された彼女のせっかくのハーレムを私が土足で踏み込んでしまうみたいで勝手に恐縮してたんだけど…どうやら、彼女の顔を見る限り杞憂だったみたい。

ホームルームが終わると彼女は私の席へと駆け寄って来た。

「嬉しいなぁ。今まで女子は私だけだったから…えっと…須川さん！」

「ん、Aでいいよ」

呼び方に戸惑っていたようなので普通に下の名前で呼んでいいと伝えると、彼女は少し気恥ずかそうに「じ、じゃあ…Aちゃんって呼ぶね」とはにかんだ。

なにこの子めちゃくちゃ可愛い。

「私の事はあんずでいいからね」

「わかった。あんずね」

「ハイハイ～！俺も転校生と仲良くしたいな～！」

「うぉとっ！？」

いつの間にか私とあんずの間に入って来た男子生徒に驚いて軽く飛び退く。

「俺、明星スバル！いきなりだけどお金を貸してください」

「本当にいきなりだな…」

あんずは特に驚く様子もなく「明星くん…」とただ苦笑を浮かべている。
もしかして、この子いつもこんな感じなの…？

といった視線をあんずに向けると彼女は困ったように頷いた。

あ、やっぱり？

「なんでいきなり金なの…？」

「だってお金ってキラキラしてるだろ？俺、キラキラしたものが好きなんだ」

あ、無理。
こういうタイプは絶対に関わると面倒だわ。

「おい、明星。前にも一度言ったが初対面でいきなり金をせびるな。転校生が驚いているだろう」

え、誰の声？？

振り返ると黒髪の男子生徒が呆れた表情で「すまんな、転校生」と一言謝ってきた。

「明星はアホなんだ。いい奴ではあるんだが…」

「うん、それはなんとなくわかる」

思わず苦笑を零すと、彼は安心したように笑みを浮かべた。
明星くんとずいぶん仲が良いんだな。