10分間だけでいいから､俺と恋人になって｡

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愛おしそうに髪を撫でてから､
赤葦は､優しく唇を重ねた｡

短いキスだけれど私には充分
過ぎるくらいで､行き場のない
幸せをただただ噛み締めた｡



『…赤葦と､もっと居たかった』

「……俺もだよ｡今凄く後悔してる」



ぽろぽろ溢れてくる涙を手で
拭ってから､またキスをする｡

お互いに､時間を掛けすぎた｡
関係が壊れるのが怖くて､
何も言い出せずにいたから｡



〈…隕石が……ｻﾞｻﾞ…もう目の…〉



ラジオからそんな声が聞こえて
また泣きそうになると､赤葦は
私の顔を上に向かせこちらを見る｡

やさしい､顔｡



『赤葦､』

「…ん？」

『好きだよ』



そう言って笑えば､赤葦も笑い
ながら涙を零しはじめた｡

慌てて拭おうとするけど
手がもう間に合わない｡



「かっこ悪い所見せちゃったなあ」

『あはは､そんな事ないよ』



ごっつん､とおでことおでこを
合わせて､また笑い合った｡

もう､終わっちゃうけど｡
最後だけど｡この人と最後を
迎えられて良かったと思う｡



『……好き』

「俺も､好き」









貴方と最期を迎えられて､本当に良かった｡

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