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72_蓮矢ゆうき【世界を嫌いになりたい】 ページ27



夕食の席から戻る途中。
ボクは、お世話になった背中に、そっと声をかけた。

「な、七夜さん……さっきはありがとう。ボクじゃ上手く言えなかっただろうし……七夜さんのお陰で皆、分かってくれたみたいだから……」
「んー?そんな感謝されるような事ちゃうやろ。俺は、ゆうきの意見も一理あると思ったからな。それに……」

しゃがみ込み、背の低いボクと真っ直ぐに視線を合わせて、七夜さんは言った。

「お前は俺を疑わへんかったやろ。せやったら、俺もお前を信じてやらんとあかん。皆のお兄ちゃんとしてな!」

ニッと笑う七夜さんは、いつも通り元気で明るくて……ボクはホッとすると同時に、心が暖かくなるのを感じた。

「仲直りも出来たんやんな?」
「あっ、う、うん!!七夜さんのお陰だよ……!」
「俺は助言しただけや。自分で考えて行動したんは、ゆうきやで。もっと自分に自信を持つんや。それからな……」

少し言いにくそうに口ごもった後、七夜さんは首をかしげるボクに気づき「あぁ、すまんすまん」と笑ってみせた。

「……俺な。別に、皆に危害を加えるつもりは無いし、出来る事なら皆と仲良くしたいんや」
「……うん」
「信じてくれたお前やから言うけどな、俺はお前らの事ちゃんと大切にしたいと思ってるんや。何も理由が無くて、皆を傷つけたくて、ここにおるわけやない。それだけは信じて欲しいねん」

七夜さんが、どうしてボクにそんな事を言ったのかは分からなかったけれど……何だか、聞いていて心地が良い。

あぁそっか、と。これが七夜さんの本音なんだ、と思った。

ボクは観察力があるわけでもなければ、勘が鋭くもない。周りをよく見ていると言われるけれど、素早く行動できるかと言われれば、それは違う。自分の事だけで手一杯なのだ。

けれど、その時に見えた七夜さんの表情は。普段の快活な笑いでも、無理してまで作った、ぎこちない笑顔でもなく。

安堵して、つい言葉が零れ落ちてしまった……そんな、柔らかい心の底からの笑みだった。

「……うん。うん」

何だか泣きそうになる。色んな事があり過ぎて、必死に活用した脳がパンクしてしまいそうだ。

けれど今ボクの胸を満たしているのは、疲れでも不安でもない。
オズさんとの絆を再確認できた事への喜び、皆に自分の考えを伝えられた事から来る安心感、そして、何があっても皆を守ると改めて強く願えた事の感動が、ボクの心を一杯にして今にも涙となって溢れ出て来そうなのだ。

72_続き→←71_傘村折心【世界で救われたい】



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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:製作者一同 x他6人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年2月11日 22時

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