第三話 ページ3
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───･･･それで、いまに至ると。
結局おれは逃げることは出来なかった。本能的に逃げなくてはいけないと悟ったものの、それと同時に逃げられないと直感的に思った。
そこからの記憶はなかった。気を失ったのだろう。失禁したようで股は濡れていた。それほどまでに感じた恐怖は、今も男を支配していた。
───･･･あの時合わせてしまった異色の瞳。
あれが完全に脳裏に焼き付いており、ふとした時に頭を
あたりは音を失ったかのようにしんと静まり返り、月が雲に隠れてしまえば辺りは暗闇に呑まれ、一寸の先も見えなくなる。これでは目を閉じても変わらない。
足枷は着いていなかったが、肝心の足はまるで立つことを忘れたかのように力が入らない。男は身体の震えを止めるように、腕を思い切り掴む。力はあまり入らなかった。
そしてふと、男は思い出す。
｢なんでおれの名前を･･･｣
あの鬼は確かに、男の名を呼んだ。
｢久しぶり、だね。Aくん｣･･･と。
以前に会ったことがあるのだろうか。だが、言わずもがな男に鬼の知り合いなどはいない。むしろ、鬼が実在すること自体を今日初めて知った。ただの作り話ではなかった。あれは明らかに人ではない。
男が為す術なく、ただただ頭を抱えていると、突然床が酷く軋んだ。男は声にならない悲鳴を上げ、音のした方(暗闇しか見えないが)を見た。すると暗闇からあの鬼の声がした。
｢あ、Aくん起きたんだ。よかった。このまま日の出まで寝てたらどうしようかと思った。せっかく久々に会えたのに、何もしないまま君に帰られたら困るからね｣
鬼の声音は心做しか明るい。少し興奮しているようだ。鬼は一呼吸入れて再び話し始める。
｢･･･どう?驚いた?驚いたよね。あのね僕、もう一人で歩けるんだよ。走ることだってできる。あの頃とは違う。元気になったんだ｣
ぎしぎしと床が軋み続ける。男は鬼がこちらに向かってきているのだと分かった。だが、分かったところで今の男にはどうすることもできない。男の鼓動は更に速まる。
｢やっと僕ら、遊ぶことができるんだよ｣
鬼の言葉に反応するように、月の光が分厚い雲の合間を抜け屋敷を一層強く照らした。目の前には嬉々に満ち、歪んだ笑みを浮かべる鬼の顔があった。
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はちすか(プロフ) - 莓さん» コメントありがとうございます。わあああああありがとうございます！励みになります;; これからゆるゆると更新していく予定なので、また読んで頂けると嬉しいです！ (2023年3月10日 22時) (
レス) id: 5f02774b91 (このIDを非表示/違反報告)
莓 - うああああああ好きです！！！好きです！！！！設定とか全部好きです！！次の話楽しみにしてます！！！ (2023年2月20日 7時) (レス) id: fd5e919b08 (このIDを非表示/違反報告)
はちすか(プロフ) - アップルパイの生地さん» こちらの作品にもコメントして頂きありがとうございます。そう言って頂けて光栄です･･･！ 頑張れます。アップルパイの生地 様もお身体にお気をつけて、学校頑張ってくださいね (2022年7月18日 23時) (レス) id: 89de0f7806 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイの生地 - ふぇ...。どの作品もすごいです...。学校頑張れます！ (2022年7月18日 22時) (レス) @page3 id: 16abac1544 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はちすか | 作成日時：2021年11月2日 16時
