記憶178 ページ38
憔悴しているのか、記憶よりもかなりやつれている母は紙袋からパステルカラーで統一されたプリザーブドフラワーを取り出し、備え付けの小さい棚の上に飾った。
「あ、これも良かったら」
そう言って友人は母にビニール袋を渡した。
中身を見るために母がビニールを開いたので、私もそれを覗き込んだ。
中にはみかんが何個か入っていた。
「ありがとう。食べてく?」
母が二人に聞くが、顔を見合わせてからどちらも首を横に振った。
「もうすぐテストなので、これで失礼します」
「Aさんが起きた時に遅れた分の勉強教えてあげたいので、いい点取りたいんです」
鼻の奥がつんとした。
今泣いても誰にも見られないのに何故か我慢しようとして、目をギュッと瞑って涙をこらえる。
私はなんて友達に恵まれているのだろう。
「そう。……これ以上遅れないためにも、Aには早く起きてもらわないとね」
寝ている私の頭を撫でる母は、手のかかる子供をあやす時のような優しい表情をした。
また来ますと言って病室を出ていくふたり。
残された母は二人が座っていた椅子に座って、持っていた鞄から透明のクリアファイルを出した。
厚みはなく、紙は二、三枚しか入ってなさそうだ。
寝ている私の顔を見て、母はゆっくりと話しはじめた。
「先生に言われたの。もし目が覚めても……」
言葉に詰まった母がファイルに目を落とした。
辛そうな顔から、そこに書かれているのが軽い内容ではない事が分かる。
俯く母の後ろに立ち、内容を確認する。
ああ、そうか。
言葉にできなくなるのも納得だった。
【頭部の損傷から下半身麻痺、又は体の一部に同一の症状が出る可能性があります。】
心無い言葉が私の目を釘付けにした。
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小学7年生(プロフ) - ビビさん» コメントありがとうございます! ぼんやりとしか決まってないですが、アンケの結果を考慮するとこんなるかなぁというのはあります! ありがとうございます、最後まで頑張ります(^^) (2020年3月4日 17時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
ビビ - 初めてコメントさせていただきます。続きが気になって仕方ないです。終わり方決まってるんですね、どんな風になるのか楽しみにしてます。これからも応援してます。 (2020年3月4日 12時) (レス) id: 1ea5bff0da (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - ゆきさん» めちゃくちゃ嬉しいです……(;ω;)一応終わらせ方のだいたいの方向性は決まってるので最後まで見て頂けると幸いです(●´▽`●) (2020年3月1日 12時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 初めまして、こんにちわ!このお話とても面白くて凄く好きです!これからどうなるのかとても楽しみです♪無理せず頑張ってください!応援してます(*´ω`*) (2020年3月1日 10時) (レス) id: d382303660 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - ウーロンティーさん» 光栄です! ありがとうございます、頑張ります〜!! (2020年2月19日 0時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月24日 18時