空っぽを埋めるモノ4【RKRN】

記憶169 ページ29

(わあ……！)





学園にいると外のことなんて分からなかった。
鍵を探しに行った時や、昨日の試験の時に見た景色からは想像もつかないほどに賑わっているここは町人たちの活気に溢れている。



これが六斎市なのだろうか、普通の店に加えて露店商も数多く並んで客寄せをしていた。



同じようなものが並んでるのにそのどれにも違う魅力があって目移りしてしまう。
夏祭りに近いだろうか。
りんご飴に焼きそばにたこ焼き、同じ店が何店舗も出ているのにどこで買おうか迷ってしまう、そんな感じだ。




しかし私が町に来た理由はあくまで本を見に来たから。
山本さんの言っていた本屋はどこのことだろう。



｢どこから見る？｣



慣れない小筆を小松田さんに渡された和紙のノートに走らせる。




【本を見に行きたいです】




｢それならあっちにある店から見ようか｣




利吉さんが向いた方向にその本屋があるのだろうが、私に見えるのは人の大群だけ。
見えなくても利吉さんの後に着いていくだけなのでいいのだが。




人と人の間を縫いながら後を追うが、これではいつはぐれてもおかしくない。
こんな時声が出せたら呼び止めたのに。
せめて見失わないようにと必死になっていたらぶつかった拍子に和綴じ本を落としてしまった。



買い直すといってもいただき物。
急いで拾い立ち上がるが、利吉さんの姿は見えなくなっていた。




はぐれてしまった。

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