記憶143 ページ3
机に向かい、ノートを開いて文字を書く。
借りた着物についてはたたみ方がわからず、適当にたたんでもし変なところにシワを作ってしまっても迷惑だろうし、開いてたたませ直すのでは二度手間になる。
ということで着物は床に広げた状態で置いておくことにした。
掃除は毎日してるので汚くはないはずだ。
それを終え、艶やかな敷物を踏まないようにしながら正座をしていた。
かばんに入っていたノートは計五冊。
そのうちの一冊は四分の一ほどしか残っていなかったが、残りの四冊は比較的新しいものと、半分ほどしか使ってないものだった。
これだけページが残っていれば、当分は凌げるだろう。
説明を求められそうなところは全て書き終え、来る途中に考えた必要になりそうな言葉もページごとに書いてある。
筆箱に入っていた付箋を貼って、どのページがどの言葉なのかもわかりやすくした。
やることがなくなってしまったと思っていると、授業終了を伝える鐘が鳴り響いた。
山本さんもくノ一教室での授業が終わっただろうし、こちらに来てくれるだろう。
「……」
もしかしたら声が出るようになっていないかと試してみたが、やはりダメだった。
人と話して返事をするのにワンテンポどころかツーテンポもスリーテンポも遅れてしまうというのはかなり厄介だ。
まあそうだよなと、ある程度の予想はついていたので落ち込みなどしない。
帰路の途中、久々知さんに落ち着きすぎではないかと内緒話のように訊かれた。
小声にしたのはおそらく、鉢屋さんを気遣ったのだろう。
事が事なだけに、楽観視しているようにすら見えたかもしれない。
彼の質問には曖昧な表情を返すことしかできなかった。
――元の時代に帰ったら治ってると思いますし。
この生活を否定するようで、どうにも言えなかった。
「Aちゃん、私よ。もういる?」
考え込んでいて思わず身体が跳ねた。
立ち上がり、着物を踏まないように避けて歩く。
戸を開けるとそこにいた山本さんは「戻ってたのね」と微笑んだ。
彼女の視線が床の着物にいく。
すみません、たたみ方が分からなくて。
ついそう喋ろうと口を開いた。
頭では分かっていても本能でそうしてしまう。
口を開いて黙っている私を見てははーんと何かを察した顔をする。
「さては、たたみ方分からなかったのね?」
眉を下げて笑いながらこくりと頷く。
それ以上に話さないといけないことがあることはわかっていながら。
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小学7年生(プロフ) - ビビさん» コメントありがとうございます! ぼんやりとしか決まってないですが、アンケの結果を考慮するとこんなるかなぁというのはあります! ありがとうございます、最後まで頑張ります(^^) (2020年3月4日 17時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
ビビ - 初めてコメントさせていただきます。続きが気になって仕方ないです。終わり方決まってるんですね、どんな風になるのか楽しみにしてます。これからも応援してます。 (2020年3月4日 12時) (レス) id: 1ea5bff0da (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - ゆきさん» めちゃくちゃ嬉しいです……(;ω;)一応終わらせ方のだいたいの方向性は決まってるので最後まで見て頂けると幸いです(●´▽`●) (2020年3月1日 12時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 初めまして、こんにちわ!このお話とても面白くて凄く好きです!これからどうなるのかとても楽しみです♪無理せず頑張ってください!応援してます(*´ω`*) (2020年3月1日 10時) (レス) id: d382303660 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - ウーロンティーさん» 光栄です! ありがとうございます、頑張ります〜!! (2020年2月19日 0時) (レス) id: f875b378db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年1月24日 18時