マルフォイ家物語・・・プロローグ編２ (ページ18)

今日:26 hit、昨日:2 hit、合計:3,109 hit

入学式４ページ18

帽子が歌い終わると今まで静かに聞いていた上級生、そして先生方が拍手する。
　割れんばかりの拍手の中、私は物思いにふけっていた。
　勇敢、忍耐、機知、そして狡猾さ。
　最後だけなぜか印象が悪い言葉だが、ようするに目的を達成するための決断力……と言いかえることができる。
　でも……これら四つの一つでも、まったく持ち合わせていない人間がいるのだろうか？
いや、これらは人間が生まれながらに持っている要素だろう。勿論偏りはあるし、それが個性と言えるのかもしれない。
　だから、この帽子が見るのはおそらく、その子がどのようなものを持っているかもあるだろうが……それ以上に帽子が最も見るのは、その子が何をその中から選・ぶ・かなのだろう。
であれば、私の行くところは決まっている。
　もともとお父様たちもそれをお望みだ。
「ＡＢＣ順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組み分けを受けてください」
　そう言いながら、長い羊皮紙の巻紙を手にしてマクゴナガル先生が進み出た。
　そして一人目が呼ばれる。
「アメリア・ブラウン！」
　金髪の三つ編みをした女の子が、恥ずかしいのか、頬を染めながら前に出て帽子をかぶる。
　少しの沈黙の後、
「グリフィンドール！」
　帽子が叫んだ。
　右側のテーブルがワッと湧き、安堵の顔を浮かべた一人目がグリフィンドールのテーブルへ歩いて行く。
　上級生は彼女を快く歓迎していた。
　私のファミリーネームは「m」だ。もう少し先になるだろう。
　途中で呼ばれた、縮れ毛の女の子は「ハーマイオニー・グレンジャー」というらしい。
　私の記憶では、グレンジャーという名前の家名は魔法族になかったはずだ。
　ということはマグル出身なのだろうとあたりをつける。
　やはり彼女は、素晴らしい才能を持っているのだろ。
　そして順調に組分けが進み、ついにその時が来た。
「マルフォイ・レイラ！」
　私は前に置いてある帽子に歩み寄る。
　……特に緊張はない。
　ただ、な・す・べ・き・こ・と・を・な・し・、選・ぶ・べ・き・も・の・を・選・ぶ・だけだ。
　そう考えながら歩いていると、ふと、大広間が不思議な程静けさに満ちていることに気付いた。
　スリザリンのテーブルだけは、ひそひそしながら私を見ている。
　私の頭の上に帽子がおろされる。
　私の視界は、真っ黒な闇に覆われた。
　帽子がおろされる直前私が見たのは、何故か数人の男子生徒が熱っぽい視線を送っている光景だった。